陰核切除に陰部縫合......いまだアフリカ、中東社会に残る「女子割礼」の実態

ドキュメント 女子割礼 (集英社新書)
『ドキュメント 女子割礼 (集英社新書)』
内海 夏子
集英社
756円(税込)
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 女性の性器の一部を切除する「女子割礼」という慣習をご存知でしょうか? 言葉は聞いたことがあっても、今も現在進行形で行なわれているという現実は、あまり知られていないようです。

 昨年、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)が公表した報告書によれば、過去20年間、アフリカと中東29か国で女子割礼の慣習は減少傾向にあるものの、いまだ一般的に行われている国もあり、たとえばソマリアでは15~49歳の98%の女性が割礼を経験。さらにギニアでは96%、ジブチは93%、エジプトは91%もの女性が割礼を受けているというのです。

 ユダヤ教やイスラム教の宗教儀礼で行なわれる男子の割礼が、性器の包皮を切るだけなのに対し、女子割礼の場合には、あるべき器官の一部を切り取る"切除"以外の何物でもありません。切除には、ガラスの破片、カミソリ等を用い、麻酔や消毒もない不衛生な環境で実施されることが多く、大量出血を引き起こした結果、命を落とす少女も少なくありません。

 WHO(世界保健機関)の分類によれば、女子割礼の方法は、以上の4タイプに分類されます。

タイプ1:陰核を一部または全部切除するという、クリトリスデクトミー。
タイプ2:陰核切除+小陰唇を一部または全部切除する、エクシジョン。
タイプ3:外性器の切除および膣の入り口を縫合する、陰部封鎖。
タイプ4:性器の周辺組織を焼く陰核焼灼や、小陰唇を引き伸ばすなど、タイプ1~3のいずれにも属さないもの。

 なお、もっとも過酷なのものがタイプ3の陰部封鎖とされています。陰部封鎖の場合、陰部を縫い閉じてしまうため、排尿や月経のたびに激しく痛みます。また、結婚初夜には、夫となる人が縫合した部分をナイフやハサミで切り開かなければ、性交できません。ほとんどの女性が性交痛や出血に苦しむことになります。傷口からHIV等に感染する場合や、傷口が硬化することにより出産時に膣口が広がらず、帝王切開せざるを得ない場合もあるのだとか。女子割礼は、切除・縫合時の一時的な痛みだけではなく、女性のその後の人生に長期間にわたり多大な苦痛を与えます。これを女子の通過儀礼とみなすには、あまりにも残酷です。

 一体なぜ、このような女性を苦しめる慣習が、現在でも行なわれているのでしょうか? 

 本書『ドキュメント女子割礼』著者の内海夏子さんは、綿密に取材を重ねた上で、母親や祖母、叔母等の親族が「娘が一人前の女性として社会に受け入れられるように」通過儀礼及び結婚の条件として割礼をさせている実態を描いています。割礼が当たり前のように行なわれている地域では、割礼をしていない女性は、組織の一員と認められず、結婚できません。女性の地位が低い社会では、結婚して夫に養って貰う以外の選択肢はなく、女性にとって割礼を受けるか否かは、まさに生きるか死ぬかの問題と言えます。

 女子割礼が行なわる社会的背景について、現状を知り理解することが、廃絶への一歩となる――そう信じたいですが、内海さんはこう語っています。

"外側からの圧力によって女子割礼を撲滅させるのは困難、どんな悪習でも、その地域に暮らす人々の心に深く根を下ろしたものである限り、当事者自身が声を上げることでしか、廃絶の道筋を作ることはできない"

 事実を知った彼女の語る「外圧では撲滅するのは困難」という言葉を、我々はどう受け止めればよいのでしょうか。

 
【関連リンク】
ユニセフ最新報告書を発表-何百万人もの女子が女性器切除(FGM/C)の恐れ
http://www.unicef.or.jp/library/pres_bn2013/pres_13_24.htm

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