スケート界はセクハラし放題という理解でよろしいでしょうか?

女性にやさしい日本になれたのか
『女性にやさしい日本になれたのか』
アグネス・チャン
潮出版社
1,404円(税込)
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 参院議員で日本スケート連盟会長の橋本聖子(49歳)さんによるセクハラ疑惑が世間をにぎわしています。

 事の発端は、週刊文春8月20日発売号の記事。橋本さんが、フィギュアスケート選手の高橋大輔さん(28歳)に無理やりキスしていた様子を、生々しい写真とともに報じています。

 問題のキス写真は、ソチ五輪最終日となる2月23日、選手村での打ち上げでのひとコマだそうで、橋本さんの事務所は、「キスを強制した事実はありません」とマスコミ各社にコメント。また、高橋選手のマネジメント会社も、「スケート界では健闘をたたえて、ハグやキスをすることはよくある」と回答するなど、セクハラ疑惑を完全に否定しております。

「キスはしたけど強制じゃない」
「スケート界ではよくあること」

 スケート界、すごいです。このロジックがまかり通るなら、スケート界はセクハラ天国ということになります。本人同士がセクハラじゃないと言っている時点で、話は終了してしまうのかもしれませんが、やはり双方の立場を考えると微妙すぎます。

 橋本さんは国会議員&日本スケート連盟会長&日本自転車競技連盟会長&2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会理事と、非常に権威ある立場のお方。一方の高橋選手は一選手。同誌でも、"これは立場を利用したセクハラだ"と糾弾していますが、立場が立場だけに「スケート界では常識」という理由だけで、あのようなキスやハグが看過されるべきものではないでしょう。

 また同誌では、スケート協会副会長の鈴木惠一氏にもコメント取材をしていますが、鈴木副会長は、(橋本さんの行為は)相手が男性だからセクハラに当たらない、と発言しているというのです。どういう真意で言っているのか分かりかねますが、額面通り受け取ると「男だったら女性(49歳)にキスくらいされても我慢しろ」と言っているようなもの。なんというか、ものすごいセクハラ容認発言です。

 この発言含めて、一連の問題について、日本のフェミニストの方はどうお考えなのでしょうか。スケート界のことはわからないから、態度を保留されている方。もしくはあの写真だけではセクハラと認定できないと思っている方。また、これはこれそれはそれ、と非常に柔軟なスタンスで傍観されている方......等々、いろいろいらっしゃるのかもしれません。

 ただ、男女平等の原則からすると、この問題を見過ごすのはいかがなものかと。

 本書『女性にやさしい日本になれたのか』はフェミニストとしても知られるアグネス・チャンさんの新著。第一子を出産後、収録現場に子どもを連れて出勤したことの是非にわいたいわゆる「アグネス論争」から27年。あの当時に比べて、どれくらい日本社会の女性支援は進んだのか、アグネスさんが自らの経験を踏まえて語る一冊です。

 この27年で、女性にやさしい日本になれたかどうかは、判断のわかれるところだとは思いますが、ただ男女平等の社会が進んだ欧米諸国に比べると、まだまだ道半ばと言わざるを得ません。日本社会に本当の意味での男女平等をもたらすためには、こうしたセクハラ問題についてもうやむやにすべきではないでしょう。

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