「病的な自分好き」が急増、原因はインターネットでの投稿にある?

病的に自分が好きな人 (幻冬舎新書)
『病的に自分が好きな人 (幻冬舎新書)』
榎本 博明
幻冬舎
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・感情の浮き沈みが激しい
・自慢話ばかりする
・人の手柄をすました顔で横取りする
・引き立てられないと機嫌が悪くなる
・人に何かを「してあげた」ことはすべて覚えている
・わざとらしいことをするのが平気
・ギブ・アンド・テイクが成り立たない

 上記のような傾向に心当たりがある人は、「病的な自分好き」な可能性が高い?

 いくらなんでも、自分は該当しないと思うようなことばかりですが、この「病的な自分好き」、実はかなりの勢いで蔓延し始めていると、心理学博士の榎本博明氏は言います。

 その大きな原因となっているのが、インターネット。

 かつては不特定多数への情報発信の権限は、マスコミ関係者が握っていました。マスメディアは、各界の専門家や実績を残した人を選出し、発言権を与えてきました。時には、街頭インタービューなので、一般人の声が反映されることもありましたが、それもマスメディアが編集を施してからの情報となっていました。

 しかし、今は、すべての人がインターネットで情報発信が可能になりました。民主化の力になっているというメリットはあります。ただ、プロ・アマの区別がなくなり、誰もがプロでもあるかのように評論家になり、コメントを発信することができるのです。

 例えば、文学賞受賞のニュースで、作家のことを少しでも「嫌い」と感じた人が、その人物の作品を酷評するコメントを書き込む。その作品を読んだことがないにも関わらず。さらには、普段から文学には無縁だったりするのです。

 また、野球中継で贔屓チームが負けていると、解説者まがいに選手を酷評する書き込みを行う。元プロ野球選手でも優秀な解説者でもないのに。草野球でさえ満足にやっていない人が、自分よりも経験・能力・実績のある選手を上から目線で酷評するのです。
 
 親しい友人からの反響があるだけでなく、言い回しのテクニックだけで、知らない人からも「面白い」「なるほど」「そのとおり」と評価されることで、どんどん酷評にはまっていくのです。

 「かつてなら実績や能力からして論じる資格がないということで相手にされなかったような素人でも、専門家気取りで上から目線の論評をすることができる。〈略〉このような発信権を手にしたことで、現代人の『自分大好き』度合いは、自己効力感という形でみるみる肥大化していく。この万能感の幻想が、傍若無人の態度を助長する。『自分大好き』の度合が肥大化しすぎて見失われがちなのが、相手の立場に立つという姿勢である」(榎本氏)

 作家や野球選手がどのような苦労を経て、いまその瞬間を迎えたのか、他人の事情や気持ちは関係ないのです。

 「大切なのは自分がどう思い、どう感じるかだけ。この種の共感性の欠如や、自分自身を神の如くに過大視したコメントが世に溢れている。こうした風潮も、自分大好き人間を大量に生み出す元凶となっている」

 ここまで極端に上から目線でこき下ろすようなことはないかもしれませんが、相手をおもんぱかることを忘れてしまっては、いつまでも、インターネットで私たちの生活が豊かになったとは、言い切れないでしょう。

 インターネットでの情報発信、「投稿」ボタンを押す前に今一度、自分に見合ったコメントであるのかを見直してみてはいかがでしょう。

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