予習で格段に楽しめる『サタデー・ナイト/NYからライブ!』

- 『サタデー・ナイト/NYからライブ!』
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1975年10月11日土曜日午後10時、ニューヨークのテレビ局NBCは猛烈な混乱の中にあった。スタジオを走り回る中心人物は若干30歳のローン・マイケルズ。この後わずか90分後、午後11時30分から放送開始となる新番組の準備があらゆる部門でスムーズに進まず、プロデューサーのローンが全方位的に指示を出し続けなければならないためだ。
台本通りだと三時間となるため内容を半分に減らさなければならないし音響は思ったより小さいし照明は落ちるし、アメリカ中からかき集めた若手出演者たちは不平不満を述べまくりベテランゲストとは衝突、一人はローンの妻にして放送作家と怪しい関係にあるし一番の問題児は契約書へのサインをなかなかしてくれない上にどうやら麻薬漬け、局の上層部に至っては長年続いていた古臭いトーク番組の再放送VTRを用意してこっちを流せなどと圧をかけてくる始末。果たしてローンは全ての準備を間に合わせ、生放送を無事スタートできるのか。
日本映画でいえば『ラヂオの時間』にかなり近いタイプだが、本作『サタデー・ナイト/NYからライブ!』は実在の番組の舞台裏を描く、登場人物全員が実在する(ほぼ)実話。放送を控える番組の名は『NBC's Saturday Night』、後に改題され、50年以上を経た2026年現在も放送中のバラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』(通称SNL)のことだ。
それゆえ我々はなんだかんだで混乱を収めて無事放送にこぎつけ番組は大成功の道を歩んでいくことを知りながらの鑑賞となるのだが、だとしてもこのトラブル連発ぶりはかなりの異常事態であり、ローンを応援しながら手に汗を握らずにはいられない。
また、この手の実話映画では再現度も注目されると思われるが、その辺も抜かりがない。中でも最初期レギュラー出演者のうち、特にジョン・べルーシ、チェビー・チェイス、ダン・エイクロイドのそっくりぶりは凄まじい。それも単なるモノマネではなく、本人なのではないかと疑うほどのレベルだ。よく知らないからまあ似てるんじゃない? と思える、というわけではない。実際、筆者は本作鑑賞前にSNL初回を復習鑑賞しており、その目で見ても驚異のそっくりぶりなのである。もしかして全員、本人ゆかりの人なのか。
と思いきや、SNLに直接関係があったのはどうやら監督脚本のジェイソン・ライトマン(作家として一時的にSNLに参加)だけらしい。代わりに関係者への膨大な取材、当時の資料への徹底したリサーチの結果、これほどのクオリティとなったようだ。
もっとも、ライトマンは『ゴーストバスターズ』を筆頭にSNL卒業生を中心に据えた映画群を多数製作あるいは監督したアイヴァン・ライトマンの息子であり、幼少期から間接的とはいえSNL周りの文化を自然と吸収していたであろうことも大きいのだろう。
と、本番間に合うのかサスペンスコメディとして上出来な本作ではあるものの、ここまで書いてきたように実話ベースであるだけに、ある程度の予習をしておかないとなんだかわからなくなってしまう可能性は高い。できればSNL初回(日本ではファーストシーズンDVDボックスを入手できれば字幕付きで鑑賞可能)と、スタジオ内を落ち着きなくうろつくゲスト出演者アンディ・カウフマンの伝記映画『マン・オン・ザ・ムーン』(SNL初回再現シーンあり)などを先に鑑賞し、べルーシ、チェイス、エイクロイドらのフィルモグラフィーをざっと確認しておくと、あの出来事か、あの映画のあの人か、ということを知れて大幅に解像度が上がった状態で楽しめるはず。おかげで筆者は最後のタイトルコールでちょっと感動して泣きそうになってしまった。
文/田中元(たなか・げん)
ライター、脚本家、古本屋(一部予定)。
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