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【無観客! 誰も観ない映画祭 第56回】『やくざ刑罰史 私刑(リンチ)!』

やくざ刑罰史 私刑!
『やくざ刑罰史 私刑!』
石井輝男,石井輝男,掛札昌裕,大友柳太朗,林真一郎,石橋蓮司,宮内洋,八尋洋,安部徹,平沢彰,藤田佳子,尾花ミキ,賀川雪絵,矢奈木邦二郎,大木実,菅原文太
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『やくざ刑罰史 私刑(リンチ)!』
1969年 東映 96分
監督/石井輝男
脚本/石井輝男、掛札昌裕
出演/菅原文太、石橋蓮司、宮内洋、大友柳太朗、大木実、伊藤久哉、吉田輝雄、藤木孝、高英男、賀川雪絵、片山由美子 ほか

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「キング・オブ・カルト」と呼ばれる石井輝男監督。新東宝で、若き宇津井健のモッコリタイツ姿が恥ずかしい和製スーパーマン『スーパージャイアンツ』シリーズ(57年~58年)や、『女体桟橋』(58年)、『女体渦巻島』(60年)といった何だか気になるタイトルの作品を手掛けます。のち東映に移籍すると、高倉健主演の『網走番外地』シリーズ(65年~67年)を大ヒットさせ、前衛芸術とエログロ娯楽が奇跡のように同居した衝撃作『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』を邦画史に残しました。

 そんな「任侠路線」、「異常性愛路線」に続いて東映は、今回の作品に代表される「ゲバルト路線」を敷きます。「ゲバルト」とは「暴力」を意味するドイツ語で、学生運動や労働争議での実力行使、つまり70年代安保における武力闘争を表す流行語でした。

 内容は江戸・明治・昭和の三部作オムニバス構成で、各時代におけるヤクザの内ゲバ(内輪揉め)、掟に背いた者への制裁を描いていきます。石井監督は「オムニバスは当たらないというジンクスを破ってみせる」と意気込んで撮影に臨みましたが、脚本を書いた掛札昌裕は「やっぱり男を責めても⋯」と冷めた感想を漏らしていました。なおキャッチコピーは「私刑の新手二十一種」

 まず第1話は江戸時代。「ヤクザ渡世の御法度。盗みをするな。間男をするな」と渋く語るナレーションは菅原文太によるもので、以降第2話と第3話の冒頭でも似たような文言が入ります。出入り(組同士の喧嘩)でビビって逃げ回っていた腰抜けの若造・新吉役は、4年後に『仮面ライダーV3』(73年)の主役・風見志郎で大ブレイクする宮内洋。同じ下っ端には「マムシの六」(名悪役の石橋蓮司)という狡猾な小悪党がいて、「般若の常」(菅原文太)の弟分・昇平が賭場の売上をかすめるところを目撃し、それをネタにゆすります。さらに常とアネさんがデキてると、親分に嘘をチクります。兄貴分の常は親分にすっかり冷遇され、恋人まで犯されそうになった昇平は堪忍袋の緒が切れ、六のずる賢い二枚舌をドスで切り取り殺してしまうのでした。

 さて、組の掟通り制裁が行われます。まず昇平がドスで耳を切り取られ(私刑1個め)、常は左目をくり抜かれ(2個め)、新吉は簀(す)巻きにされ川に投げ込まれます(3個め)。ここで親分のやり方に不満を持っていた組最強の男・友造(当時の大物俳優、大友柳太朗)は2人を救出しようと大乱闘が始まりますが、片耳の昇平と片目の常は大怪我の身だけに力尽き、寄ってたかって斬り殺されるのでした。菅原文太もまた、『仁義なき戦い』(73年)で大ブレイクするのは宮内洋と同様4年先でした。簀巻きはポピュラーな処刑方法ですが、とりあえずカウントして第1話の刑罰数は3つでした。

 第2話は明治時代。荒木田組の尾形(大木実)は縄張りを争う甲田組に単身で殴り込み、斬り落とした組長の右手を手土産に戻ります。だが、それを命じた若頭の岩切(伊藤久哉)は、弟分の尾形に「抗争を避けるためだ。一家のためだ」と彼が勝手にやったことにして破門します。兄貴分に頭を下げられたら引き下がるしかない尾形は、3年間のムショ暮らし。しかし組からの差し入れは1度もなく、出所しても出迎えなし。それどころか待ち伏せしていた甲田組の雨宮(山本豊三)に「親分のカタキ!」と斬りつけられます。だが雨宮は吐血して倒れ、仕方なく尾形は彼を自宅まで担いで行くのですが、そこには元カノさよがいました。実は事件当時に岩切は、さよをモノにしたいがため尾形の居場所を警察に通報し、さよには「尾形は死んだ」と嘘をついていたのでした。さよに岩切がチョッカイ出す場面に居合わせた雨宮が大怪我しながら彼女を救い、それが縁で所帯をもっていたのでした。

 さて傷心の尾形が、縄張りに戻るのは掟破りと知りながら酒場で飲んでいると、それを見つけた岩切が「ヤクザの憲法だけは守ってもらうぜ」と制裁を始めます。横に倒した酒瓶の上に尾形の右手が乗せられ、その甲の上に手下が酒瓶を思い切り叩き付けます。尾形の手には酒瓶の破片が食い込んで血まみれになりました(4個め)。だが、その手下も店の売上をくすねたことが発覚し制裁を加えられます。男は竹藪で竹に縛られ、みんなから頭からションベンと日本酒を浴びせられ放置。翌朝、男は一晩中ヤブ蚊に刺されてまくって大変な顔になっているのでした。なんかユルイですが(笑)、とりあえず5個め。結末は、怒り狂った尾形が岩切一味を全滅させます。第2話の刑罰は2個しかなく、しかも第1話に比べて残酷度はトーンダウンしています。21個までまだ16個もあり、最後の第3話に期待しましょう。

 第3話は昭和時代になり、島津(藤木孝)と田口(本業はシャンソン歌手の高英男)の組乗っ取りを、謎の男・広瀬(石井作品常連の吉田輝雄)が手を貸すという話。冒頭、組長自ら操縦するヘリコプターが、組の金を持ち逃げした男をロープに吊り下げ、波打ち際を引き摺ります(本当に引き摺られてます)、しまいには「バキッ」と波打ち際に廃棄されていた電線を巻き取る大型のケーブルドラムにぶつかり、首でも折れた様子。そのまま海に捨てられた男の死体はズタボロになっていました(6個め)。このシーンは石井監督のアイデアですが、撮影現場では「酷い事を⋯」とスタントマンに同情の声が上がっていたそうです。こうして組では次々と裏切り者が血祭りにあげられていくのです。

 次の男は数人に押さえつけられ、ヒゲのデブがライターで髪の毛に着火。カツラでしょうが、俳優の後頭部が本当に燃えています(汗)。さらに男は顔を炙られ、皮がめくれ焼け爛れて両目も焼失しました(7個め)。次の処刑は何と組長。敵対組織に襲撃され病院送りになった組長を、ここぞとばかりにナンバー2の島津が鼻と口に水に浸した布を被せ窒息死させます(8個め)。

 島津が新組長に就任すると、さっき顔を炙っていたヒゲデブの裏切り行為が発覚します(どんだけ裏切り者ばかりいる組なんだ!)。島津たちは命乞いするヒゲデブを自動車のスクラップ工場に連行し、車に乗せたまま四角い穴に入れます。すると立て掛けられていた畳四畳半くらいの厚さ30センチはありそうな巨大な鉄板(カークラッシャーと言うそうです)が倒れてきて、「グシャーン!」と車の天井を潰します。「ぎゃあああ!」と悲鳴を上げたヒゲデブは、半分潰れた車の中で半死半生です。さらに「グシャーン!」と2発目の直後、カメラに映るヒゲデブの血まみれの顔がワイドに引き伸ばされます。「潰れたよ」というマンガ的表現です(笑)。さらに前後左右上下から強力なプレス機による圧縮が始まり、車をサイコロ状にしていきます。元仲間が潰されていく過程を、取り囲んだ全員が薄笑いを浮かべ、舌なめずりで見物している様子にはゾッとします。次第に中から血が滲み出し、最後のプレスで「ブチュッ」と隙間から肉片がはみ出てくるという、手を抜かない演出に拍手を送りたいです(9個め)。

 ラストは島津が前組長から奪った情婦と火遊びした弟分を、暴力団定番のコンクリート詰めにして東京湾に沈めます(10個め)。ここもさすが東映、実際にミキサー車を使って本物の生コンを、器の中にいる弟分と情婦の頭からブッ掛けています。俳優さんも大変なのです。

 さて情婦役の片山由美子ですが、作品のつい1年前まで名作特撮『ジャイアントロボ』(67〜68年)では、地球を守る組織の女性隊員として子供たち憧れのお姉様だったのにと思うと幻滅ですね。そして島津とつるむ田口役の高英男は、松竹のカルト映画『吸血鬼ゴケミドロ』(68年)で宇宙人に体を乗っ取られた役をやっていて、額がパカっと割れ裂け目からドロリとゲル状宇宙人が出てくる場面はトラウマ級。映画やドラマにこの人が出てくるたび、マニアは「あ、ゴケミドロ」と思いを馳せるのでした。

 さてさてリンチの数は合計10個。21には全然足りませんでした(苦笑)。アバウトにも程がありますが、ストーリーを至極単純にして、ケレン味たっぷりなリンチシーンを楽しむ見世物映画ということで、これはこれでよろしいかと思います。そして、仮面ライダーV3こと宮内洋の腰抜け演技、目ん玉くり抜かれてウロチョロする文太アニイと、下積み時代の大ヒーローの情けない姿が見れるのはこの作品だけです。

【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

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