なぜ「空き家問題」は解決しないのか 解決を阻む「3重の壁」と活用の可能性

教養としての空き家
『教養としての空き家』
丸岡智幸
ブックダム
1,870円(税込)
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 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」によると、日本の空き家は900万2000戸に上ります。総住宅数に占める割合は13.8%で、およそ7軒に1軒が空き家の状態で放置されていることになります。これを「地方が抱える問題」「自分には関係ない話」と思う人もいるかもしれませんが、けっして他人ごとではありません。

 空き家が増えて地域のコミュニティが崩壊すれば、人々は地方から都市部に集中することとなり、結果、都心の地価は上昇を続け、賃金が上がらない中で家賃だけが急騰することが考えられます。空き家問題は、自分が住む場所、働く場所、日本という国の未来そのものにも大きく関わってくるのです。

 そして、ここで問題になってくるのが、空き家が増えることだけではなく、「空き家問題を解決できないこと」。「今こそ、空き家を放置するのではなく、どう活用するのか、考え行動する時期」との思いから、株式会社ネクスウィル代表の丸岡智幸氏が著したのが『教養としての空き家』です。

 なぜ、空き家問題は解決するのが難しいのでしょうか。いくつもの原因がありますが、その中でも本書で取り上げられているのが「税・感情・相続」という3重の壁です。

 家を解体し更地にすると、原則として、その土地に適用されていた固定資産税などの「住宅用地特例」が解除され、税額が上がること。「長年慣れ親しんだ家を壊すのは忍びない」といった所有者の気持ちの問題。相続人であるきょうだい間でトラブルに発展しやすいこと。こうした要因が複合的に絡み合っているといいます。本書では、空き家が放置される法的な制約や人間関係のこじれなどについても、具体的な事例とともに紹介されています。

 さらに、丸岡氏が最も大きな壁として挙げるのが「政治」です。本書によると、自治体が空き家対策を専門とする民間企業との連携を検討した際、地元の不動産事業者や関係団体から反発の声が上がり、慎重になるケースが多く見られるそうです。しかし、自治体と企業の協働や、複雑な権利関係の整理、空き家に関する制度の積極的な活用などを組み合わせれば、空き家問題の解決につなげられると丸岡氏は主張します。

 本書では、丸岡氏の会社が取り組んできた事例についても掲載。たとえば岩手県紫波郡紫波町との連携では、総務省が推進する「地域活性化起業人」制度を利用し、400件の空き家リストをもとに社員が直接所有者のもとを訪れて買取交渉をしています。一時的なプロジェクトではなく、地域に根差した持続可能な空き家対策のモデルとして取り組みを強化しているといいます。

 他にも、現在では空き家や空き店舗を活用し、さまざまな人々が集う居場所をつくる取り組みが各地でおこなわれています。多拠点生活や民泊、コワーキングスペースなどに活用されている事例も。

 「新しいビジネスモデルを作りたい人、町おこしに関心がある人、日本の未来を変えたい人――。空き家問題は、我々にとって、大きなチャンスでもあるのです」(本書より)という丸岡氏。本書は空き家問題の本質を理解し、行動を起こすための教科書として、非常に有益な一冊となるでしょう。

[文・鷺ノ宮やよい]

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