『YARN』手仕事が、社会をほどくとき

- 『YARN 人生を彩る糸』
- ウナ・ローレンツェン,コンパス・フィルム,ヘザー・ミラード,オレク,サーカス・シルクール,ティナ,堀内紀子

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最近どうやら編み物ブームらしい。カフェなどで編み物をしている人を見かけることがある。私は子どもの頃にちょっと試したくらいで、今はやらないけれど、誰かが毛糸をゆっくりと編んでいる姿を見るのは好き。毛糸のふわふわとした柔らかさなのか、チクチクとしたそのリズムなのか。眠りを誘い、キャンプで溶けるようなトロ火を眺めている時のような気分になる。
映画『YARN(ヤーン)』は、そんな編み物を社会とつなぐ行為として描くドキュメンタリー。2016年のアイスランド・ポーランド合作ドキュメンタリーで、毛糸=yarnをテーマに、編み物をアートや社会活動として広げている女性たちを追った作品。とても静かで、でも芯のある映画です。
アイスランドの街中で、毛糸を使った巨大なインスタレーションを作るアーティストたち。編んだものを街角や橋、バス停に配置して、日常の風景をちょっと特別に仕上げる。
さらにポーランドでは、女性たちが編み物を通して自分たちの声を社会に届ける活動をしている。ただ毛糸を編むだけではなく、ジェンダーや労働、コミュニティの問題に関わる手段になっているのだ。
特に印象的だったのは、編み物とパフォーマンスを組み合わせる場面。サーカスのように身体で糸を操り、観客と空間をつなぐ。一見すると遊びのようだけれど、そこには「手で編むことが社会や人の心に影響を与える」という強い意志がある。編み目一つ一つに意味が宿っているようで、画面を通してでもそのパワーを感じることができる。
効率やスピードが重視される現代で、手仕事は小さな抵抗のようにも見える。防波堤とでも言うべきか。ゆっくりと手を動かすことが、自分の時間を取り戻し、社会との距離感を調整する手段になる。編まない私も、心なしかリラックスできた。一本の糸は細いけれど、世界を結び直す力を秘めているのだと感じられる。
(文/峰典子)

