もやもやレビュー

金はかかっているのに設定が破綻している『アウトレイジ・ゴッド 功徳書』

アウトレイジ・ゴッド 功徳書(字幕版)
『アウトレイジ・ゴッド 功徳書(字幕版)』
イエン・ユーチャオ,王煜凱,孟展伊,林楓燁
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 タイトルにゴッドとあるので神話が絡んだ話なのだろうと思い視聴してみたが、作品紹介にある設定の「神兵を率いる天蓬元帥は~」という部分が既に分からずGoogle先生に訊ねることに。天蓬元帥とは古典小説『西遊記』に出てくる猪八戒の天界における役職だと知る。

「これは基礎知識がないと何の話なのか分からないのでは......」という不安とともに視聴を始めたが作中に出てくる登場人物に『西遊記』の面影は皆無でほぼオリジナルストーリーだった。それ自体は中国の古典世界に疎い人間にはありがたいことなのだが、だからと言って作品が面白いかはまた別の話だった。アクションシーンとCGに金をかけている感が満載なので、その辺りのギャップが辛い。

 あらすじは、猪八戒が天界の法を破り、最高神である玉帝の怒りを買い人間界に落とされてしまう。その際、功徳書を埋め尽くすほど善行を積めば天界に戻れると言われ、物乞いとして卞庄を名乗り妖怪退治などをして日々を過ごしていた。
ある日、妖怪に精気を吸われていた金持ちの娘の翠蘭を救ったことで彼女の家に居候となるが――という内容。

 親の顔よりよく見たストーリー。しかし、エンタメはベタくらいがちょうどいい場合もある。気を取り直して視聴を進めよう。

 居候先には翠蘭のいとこで、鳥の妖怪に取りつかれている高不凡がいた。八戒は亀の妖怪を使役して取りついていた妖怪を退治するが、その亀が翠蘭に噛みつき意識不明に。
 八戒は太公望に相談し翠蘭の意識を取り戻させる。その際、八戒の正体も明かしたことで八戒と翠蘭はいい雰囲気に。彼女が意識不明の重体に陥ったのは八戒が亀の妖怪をけしかけたからだと思うが......命の恩人というより元凶でしかないのに惚れる要素があるとは思えない。

 そんな違和感を置き去りにして、突如大量の妖怪が出現。土地神が八戒に助けを求め翠蘭とともに出発。翠蘭は八戒が天界に帰るのか不安を抱えていたところに怪しい道士が「これはウソを見抜ける腕輪だ」と翠蘭に渡し、八戒に着けさせるよう迫る。
 しかし当然これは罠で、かつて八戒に敗れた窮奇大王が復讐のために用意した自我を失わせる代物だった。ベタを通り越して「そんな分かりやすい罠に引っかかる奴がいるか」と思ったら八戒は無事腕輪を装着して窮奇大王の操り人形に。翠蘭も大王に霊力を吸われ体を奪われる。
 
 そこに人間界で八戒が助けてきた土地神や精霊が助太刀に現れ、天界での力を取り戻した八戒が大王を撃破。
 功徳書は埋め尽くされて天界に戻れることになったが、八戒は多くを死なせてしまって自分だけが天界に戻ることはできないと功徳書を破り捨てる。すると大王との戦いで死んだ者たちが蘇生する。

 戦いから数カ月後、八戒はどこかへ旅立ち、その帰りを待つ翠蘭の姿が現れエンドロールへ。
中国の映画、本作に限らず話の展開が無茶苦茶なものが多すぎる。ベタな展開であっても最低限のエンタメ要素を入れられるだろうと思うが、制作過程で謎の横やりでも入るのか?と疑うレベルで脱線と矛盾が起きる。せめて作品の流れを自然なものにしてくれないかと心底思うくらいもったいない作品だった。

(文/畑中雄也)

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