踊ることで満たされる想い『Dance with Me』

- 『ダンス・ウィズ・ミー (字幕版)』
- ランダ・ヘインズ,ランダ・ヘインズ,ヴァネッサ・ウィリアムズ,Chayanne,クリス・クリストファーソン,ジェーン・クラコウスキー,ベス・グラント,ジョーン・プロウライト

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井上佐藤の漫画『10DANCE』のドラマ化が話題というところで、一本の映画を思い出したので紹介させてほしい。1999年に日本公開された、サルサを題材にした洋画『Dance with Me』である。いわゆる名作として語られることは少ないように思うし、ランキングで見かけることもほとんどない。それでも、なぜか私の記憶の奥に残り続けている映画なのである。
物語は、キューバ系アメリカ人の青年が、亡き母の足跡をたどる形でサルサの世界に身を投じていくところから始まる。舞台はフロリダ。情熱的なダンスフロアで出会うのは、かつての栄光を背負いながらも、どこか立ち止まっている女性ダンサー。言葉より先に身体が反応し、踊ることでしか伝えられない感情が、二人の距離を少しずつ縮めていく。
『Dance with Me』の登場人物たちは、目を見張るような技術を持ち、舞台に立てば堂々としている。だが、日常では感情の置き場が定まらず、言葉で表現することがまともにできない。だから彼らは踊るしかない。ダンスは関係性そのもの、言語のひとつとして置かれている。
この感覚はどこか『10DANCE』にも重なる。競技ダンスの世界で完成された身体を持つ二人の男は、その完成度ゆえに、誰かと踊ることの難しさに直面する。うまく踊れることと、誰かと踊ることは、似ているようでまったく別なのだ。ダンスは饒舌だが、感情はいつも遅れてやってくる。
相手に身を委ねてみて、はじめて見える景色。それはダンスなど全く踊れぬ自分からすると、気の遠くなるほど遠い世界なのだが、それでも静かに強烈に身体に残るものがある。"踊る世界"が羨ましくなる。
(文/峰典子)

