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第一印象で知った気になっちゃ、アカン!『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』

チワワは見ていた [DVD]
『チワワは見ていた [DVD]』
ドリー・ヘミングウェイ,ジョーン・ベイカー
オンリー・ハーツ
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「第一印象は最初の3秒で決まる」というフレーズがある。ある人にとってはよし決めてくゾ!とやる気を掻き立てるフレーズでもあるが、好印象を与えなければ、次はない!という変なプレッシャーからおろおろして撃沈......なんて人も少なくないかもしれない。ところが冷静に考えてみると、3秒で誰かを知るのは割とムリな話である。「知る」というのは、そのもっともっと先にあることなのだ。

『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』(2012年)の中心人物であるセイディ(ベセドカ・ジョンソン)の第一印象は、「ぷんすかおばあさん」だ。自宅の庭で開いたガレージセールで主人公のジェーン(ドリー・ヘミングウェイ)が水筒を買うと、「返金は受け付けないからね!」と苛立った口調で追い払っている。

後にジェーンはその水筒の中に丸まった札束をいくつも(100万円分相当!)見つけ、返したほうがいいかを探るべく、ぷりぷりセイディのもとに舞い戻る。そして跡をつけてはかなり強引な形でセイディの生活に入り込む。

ふたりで過ごす時間が増えていくうちに、セイディが「ぷんすかしているだけのおばあさん」ではないことが見えてくる。パリが好きで、夫を亡くしていて、お金は使い切れないほど持っている......刺々しい態度のワケも浮かび上がる。同時に、ジェーンのこともわかる。たとえばジェーンの肩書きは、新米ポルノ女優だ。ただジェーンはいたって普通。それにこっそり見つけたお金をただ浪費するのではなく、それをきっかけにだんだんとセイディのことを気に掛けるようになる。ガミガミしてても、職が何であろうと、蓋を開ければ皆人間!そう思うのだ。

本作の監督、ショーン・ベイカーは実はこの作品をつくるうえでポルノ業界について入念にリサーチをし、働く人々の話に耳を向け、ともだちにまでなった。そんなベイカー監督は作品を通して、ひとり歩きしているポルノ業界のステレオタイプを崩す!彼らをただ人間として写す!ということも目指していたらしい。

相手がどんな第一印象だったとしても、分け隔てなくその先を知ろうとしたり想像しようとしたりする精神があれば、見えてくる世界も少しは違ってくるのかもしれない。第一印象で知った気になっちゃ、アカン!そう自分に言い聞かせたくなる1本だった。

(文/鈴木未来)

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