他人が自分の夢をみたら......『ドリーム・シナリオ』

- 『ドリーム・シナリオ』
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『ミッド・サマー』のアリ・アスターが製作に名を連ね、ニコラス・ケイジが主演を務めたA24映画『ドリーム・シナリオ』。どこにでもいる平凡な大学教授が、大勢の人々の夢に現れ、無敵の名声を手に入れるという少し変わったお話しです。
2人の娘と妻を持ち、平凡ながらも幸せな暮らしを送っていた大学教授ポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。生物学について長年研究してきたポールは、かつての研究仲間が本を出版し、自分は執筆すらできていない事実に苛立ちを感じていました。ある日ポールは、知人や生徒たちから「あなたの夢を見た」と告白されます。さらには多くの人々がポールの夢を見るようになったことから、メディアに取り扱われ、一躍有名人に。生徒からの握手の要望や写真撮影のお願い、自分の娘達からも憧れられる日々の中、自身にもついに本出版のチャンスがやってきます。しかし、ある日を境に、人々の夢の中でポールは性犯罪者や殺人魔と化し、恐れられる存在となってしまいます。こうして大勢の人々の夢の中で"加害者"となってしまったポールの実生活は、"悪夢"と化していき......。
本作のポイントは、「自分は誰からも認められていない」という寂しさや、自己認識が低いがために他人の一言を過剰に受け止めてしまう心情を持つポールを主人公にして、名声の代償やキャンセルカルチャーについてリアルに描いているところ。実際にポールは(努力を含め)何もしていません。そんな彼が名声と絶望を経験する本作は、ソーシャルメディアがある時代だからこそ、共感できる部分も多くあるのではないかと思いました。
(文/トキエス)

