もやもやレビュー

いきなり度肝を抜かれる『めまい』

めまい (字幕版)
『めまい (字幕版)』
ジェームズ・スチュワート,キム・ノヴァク,バーバラ・ベル・ゲデス,トム・ヘルモア,ヘンリー・ジョーンズ,レイモンド・ベイリー,アルフレッド・ヒッチコック,アルフレッド・ヒッチコック,アレック・コッペル,サミュエル・A・テイラー
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妻の様子がおかしいんで尾行してほしいと友人に頼まれた探偵が、その妻を追っているうちにあまりにも魅惑的な女性なものだから恋に落ちてしまい......というのはなんだかありきたりな話の展開だ。アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』(1958年)の前半の様子である。ちなみに美人妻の様子がおかしいのは、かつて自殺願望を持っていた霊に取り憑かれているかららしい。そうしてどこからともなく彼女を襲う自殺願望を探偵スコッティ(ジェームズ・スチュワート)はどうにか止めようとするも、結局高台までダッシュし、自殺してしまう。あら、ずいぶんと呆気ないのねと画面を眺めているうちにスコッティはショックと罪悪感のあまり(高所恐怖症のせいで高台までダッシュできなかった)口も聞けなくなり、入院。そしていつの間にか退院し、街をうろうろしていると、死んだはずの友人の妻、マデリン(キム・ノヴァク)にそっくりの女性を見つけるのでまあ大変!と、テンポよくどんでん返しをくらうのである。しかし「キミのことを教えてほしい」とやさしくもしつこく尋問したのちに返ってきた返事は「わたしの名前はジュディ」。オイオイ、あんたジュディじゃないやろ......とこちらは咄嗟に言いたくなるが、さあどうでしょう。続きは本編からどうぞ。

どんでん返し以外にも心踊ることがある。ヒッチコック監督の遊び心大爆発の演出だ。スコッティが悪夢にうなされているようなシーンでは、スクリーン全体が紫からピンク、ピンクからオレンジにチカチカと点灯。そして途端にアニメーションに変わり、しまいには前髪だけが妙になびいているスコッティの生首が宙に浮いて、迫ってくる。このシーンは派手なほうだが、そのほかにも斬新なとりかたがいくつもされている。1958年にリアルタイムで観た人の衝撃を味わってみたいものである。

(文/鈴木未来)

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