悲劇的で美しい物語『ザリガニの鳴くところ』

　ディーリア・オーウェンズの大ヒット小説が原作の映画『ザリガニの鳴くところ』。テイラー・スウィフトが本作のためにオリジナルソングを書き下ろし、リース・ウィザースプーンが映画化を獲得したことでも話題となりました。心臓が引き裂かれそうなほどの悲劇的で美しい物語は、涙なしではみられない衝撃ストーリー。

　ノースカロライナの湿地帯。そこで裕福な青年チェイスの遺体が発見されます。遺体の周りにはチェイスの足跡が発見されなかったことから、やぐらから転落死したことが判明。彼が後ろ向きに転落したことから、警察は殺人事件と見て捜査を開始し、湿地にたったひとりで暮らす若い女性カイヤを逮捕します。カイヤは幼い頃から湿地で暮らしており、"奇妙な存在"として「湿地の娘」という名で町中にウワサが広まっていました。本作は、カイヤの裁判の様子と彼女の幼少期から大人になるまでのフラッシュバックを交差させながらストーリーが進んでいき、カイヤがいったいどんな人物なのかを徐々に映し出していきます。

　カイヤの壮絶な人生を通して、虐待、ネグレクト、育児放棄、そしてレイプといったデリケートなテーマをリアルに描いた本作。カイヤを演じた女優のデイジー・エドガー＝ジョーンズの純真無垢な演技は、カイヤの美しさや賢さ、優雅さを最大限に引き出しています。彼女の演技に魅了されるとともに、いつの間にか、まるで彼女を見守るような気持ちになっていることに気がつきました。しかし、彼女の人生は悲しいことばかりではなく、少ないながらも差し伸べられる手にも感動させられます。また最後には衝撃的な結末も待ち受けており、純愛に触れたい人はもちろんのこと、ミステリー好きにもおすすめできる一本です。

（文／トキエス）