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鬼才アルフレッド・ヒッチコックがつくるドンデン返し『レベッカ』

レベッカ(字幕版)
『レベッカ(字幕版)』
ローレンス・オリヴィエ,ジョーン・フォンテイン,アルフレッド・ヒッチコック
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 数々の名作を世に出してきた鬼才アルフレッド・ヒッチコック。『めまい』『サイコ』『鳥』などたくさんの素晴らしい作品の中でも、私のお気に入り『レベッカ』(1940年)を今回はご紹介。本作はイギリスで活躍していたヒッチコックがアメリカに進出して初の作品です。

 モンテカルロのホテルにホッパー夫人の付き人としてやってきた「わたし」。そこでイギリスの大富豪であるマキシムと出会い、恋に落ちます。やがてホッパー夫人とホテルを去ることになってしまった「わたし」でしたが、そこでマキシムから結婚を申し込まれ、大邸宅マンダレイに来ないかと誘われます。マキシムは一年前に妻のレベッカを事故で亡くしていたのですが、彼女は後妻としてマンダレイに住むことに。しかし、レベッカの付き人だったダンヴァース夫人からはなかなか受け入れてもらえず、さらにはレベッカの物が多く残された邸宅で徐々にレベッカの「面影」に苦しんでいき......。

 精神的に追い詰められていく主人公を演じたジョーン・フォンティン。彼女の不安げな演技に圧倒されましたが、実はこれには裏話が。IMDbによると、マキシムを演じたローレンス・オリビアは、当時の恋人だったヴィヴィアン・リーに主人公を演じてもらいたかったことから、撮影現場ではジョーンに冷たい態度をとっていたそう。これを見たヒッチコックは撮影現場にいる全員がジョーンを嫌っていると彼女に伝え、不安を煽り、素晴らしい演技を引き出したのだそう。ジョーンの立場になって考えるとなんとも酷い話にも聞こえますが、ヒッチコックが「サスペンスの巨匠」と呼ばれる意味も、なんとなくこのエピソードからわかったような気がします。

 ちなみに本作は2020年、ネットフリックスにて同名タイトルでリメイクされています。マキシム役を『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマー、主人公を『シンデレラ』のリリー・ジェームズが演じています。

(文/トキエス)

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