そこに愛しかないのです。『今日も嫌がらせ弁当』
- 『今日も嫌がらせ弁当』
- 篠原涼子,芳根京子,佐藤隆太,松井玲奈,佐藤寛太,塚本連平,塚本連平,中畠義之,林絵理
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一度でも手作りのお弁当を食べたことのある人、現在進行形でお弁当を作ってもらっている人、また毎朝お弁当作りをしている人たち、皆に見てもらいたい本作です。
夫を事故で亡くしシングルマザーとして二人の娘を育てているかおり(篠原涼子)は、八丈島で次女の双葉(芳根京子)と暮らしています。幼い頃は「大人になったらお母さんと一緒にレストランをやる」と言っていた双葉も、高校生になり、すっかり反抗期を迎え、口もきかなれば目も合わせない毎日です。
すでに自立し一人暮らしをしている長女の若葉(松井玲奈)は反抗期もなく、かおりとは今も仲が良いため、対照的な双葉にどう接したらよいか悩んだ末、かおりは、クールな双葉が喜ぶはずのないキャラ弁を作ることを宣言します。
こうして始まったキャラ弁作りでしたが、仕事の掛け持ちや内職をしながらも、かおりは宣言通り見事に高校三年間作り続けたのでした。
そのお弁当はというと、彩り鮮やかで美味しそうな上に、当時流行っていたゲッツ!やスギちゃんが描かれていたり、なぜか木工ボンドに見立てたおかずが入っていたり、とっても可愛い赤ずきんちゃんが描かれていたり...目で見ても十分美味しく楽しそうな中身ばかり。
また、「皿は片せや」「大きな声で返事しろ」などの文句ともいえる一言が書かれていたかり、テストや就活中には「頑張れ!」、失恋した時には「無駄なことは何もない」など、母から娘への大切なメッセージも込められていました。
これが実話だというのだからまた驚かされます。お弁当作りは、中身の栄養、彩りや、食べる人の好き嫌いを考えたり、朝の家事以外に作業するという意味でその分早起きをしたりと、想像以上に大変なこと。それでも作り続けられるのは、他ならぬ娘への愛情あってこそだと思いました。本作のラストのお弁当は胸アツです。
たかがお弁当、されどお弁当。冷凍食品が入っていたって、残り物のおかずが入っていたっていいんです。そこに愛があれば。お弁当作りについて、真剣に考えてみたくなる本作です。
(文/森山梓)