もやもやレビュー

色んな愛がありました。『43年後のアイ・ラヴ・ユー』

43年後のアイ・ラヴ・ユー(字幕版)
『43年後のアイ・ラヴ・ユー(字幕版)』
ブルース・ダーン,カロリーヌ・シロル,ブライアン・コックス,マーティン・ロセテ,マーティン・ロセテ
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 梅雨のじめじめした嫌な季節に、90分程で気分転換できる本作はおすすめの一本です。

 70歳の元演劇評論家のクロード(ブルース・ダーン)は、妻に先立たれてからは近所に住む親友シェーン(ブライアン・コックス)とたわいもない話をしたり老後を楽しんでいました。

 ある時、元恋人の舞台女優だったリリィ(カロリーヌ・シロル)がアルツハイマー病を患い、介護施設に入ったことを知ります。

 もう一度リリィに会い、自分とのことなら思い出してもらえるのではないか、自分なら彼女の記憶を呼び戻せるのではないかと考えたクロードは、あろうことかアルツハイマー病にかかったふりをして、彼女のいる施設に入居します。
 そして、毎日のようにリリィに二人の思い出話を優しく語りかけたり、彼女にゆかりのある花や音楽を贈ったり、あの手この手でどうにか記憶を思い出してもらおうと奮闘します。

 親友の反対を押し切って、また、娘一家にも内緒にしたこの思い切った行動でしたが、肝心のリリィはクロードのことを思い出すことはありませんでした。

 そんな折、昔リリィが演じたシェイクスピアの「冬物語」が施設で上演されることになります。クロードの想いを知った孫娘のタニアに協力してもらい、タニアの学校の演劇部の学生を配役として用意します。クロードはリリィが当時のことを思い出し、彼女の心になにか響くものがあるのではないか、役者しての記憶が取り戻せるではないか、と考えたのです。

 長い月日を経ても大好きだった人のためにこんなにも力を尽くせること、また実はリリィが既婚者であったことにも、切なくも、より強く胸を打たれました。特別彼女と愛し合いたいでもなく、彼女から見返りを求めるのではなく、ただただ相手のためだけに人生を変えてまで尽くすってなかなかできないですよね。愛ってステキだなと思った次第です。

 またクロードを取り巻く人々...リリィとその配偶者しかり、娘家族しかり、親友シェーンや、アルツハイマー病の入居者たちとの間の愛情までも感じるところがあって、なかなか見応えのある一本です!

(文/森山梓)

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