もやもやレビュー

銃乱射事件の生存者からポップスターへ『ポップスター』

ポップスター(字幕版)
『ポップスター(字幕版)』
ナタリー・ポートマン,ジュード・ロウ,ラフィー・キャシディ,ステイシー・マーティン,ジェニファー・イーリー,ウィレム・デフォー,ブラディ・コーベット,ブラディ・コーベット
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 『レオン』や『ブラック・スワン』、最近ではMCUの『ソー:ラブ&サンダー』での活躍で知られるナタリー・ポートマン。そんな彼女がポップスターを熱演し、圧巻のステージを披露する『ポップスター』を今回はご紹介します。

 本作は、ナタリー演じるポップスター、セレステの物語。彼女はティーンエイジャーの頃、学校で起きた銃乱射事件を生き延び、追悼式で歌ったパフォーマンスで瞬く間に話題となります。そこから新進ポップスターへと上り詰めるものの、アルコールや麻薬、そして恋愛に関わるスキャンダルで失墜。昔は純粋だったのに、大人になるにつれ、ナルシストになり、親密さに欠け、家族間でも問題を抱えている......そんな彼女がキャリアの再起をかけ、新しいアルバムを制作し、パフォーマンスすることに。

 平凡だった少女セレステが、大量殺人という悲しい事件に巻き込まれたことによって、世間の注目を浴びてしまう。そして、エンターテイメント業界の餌食となっていくのです。彼女が記者会見で発言したことが瞬く間にスキャンダルになる、そんな世界で、セレステは常にストレスを抱えてしまう。人生、成功しているのか失敗しているのか、どちらなのかわからないセレステの立場をまじまじと見ることで、一見華やかなエンターテイメント業界の残酷さみたいなものも垣間見えました。キラキラした世界、そこには犠牲となっている人がいるのです。

 日本でも"暴露系YouTuber"に注目が集まるなど、エンタメ業界で活躍する人のゴシップに興味を持つ人が多いこの時代。きっとそんな時代だからこそ、心に突き刺さるような一本になっているのだと思いました。ちなみに本作のセレステの楽曲を担当しているのはオーストラリア歌手のシーア。彼女の作る独特な楽曲を、ナタリーが全力でパフォーマンスする姿は必見です。


(文/トキエス)

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