もやもやレビュー

必要なものはどうにか作る『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』

抵抗-死刑囚の手記より- [DVD]
『抵抗-死刑囚の手記より- [DVD]』
フランソワ・ルテリエ,シャルル・ル・クランシュ,モーリス・ベアブロック,:ロベール・ブレッソン
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素晴らしいことに、最近ではどんな悩みに対しても解決策をポンと提示してくれるモノがある。手に入れればすぐに、楽に悩みを解決できてしまうので、身の回りのもので工夫しながら解決していこう!なんて考えは頭に浮かびさえしなかったりする。刑務所だと、話は違う。たとえば脱獄したいなんて悩みがあっても、それを叶えてくれる便利アイテムを手に入れる術はない。

『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』(1956年)で独軍に刑務所に入れられた仏軍レジスタンスのフォンテーヌ中尉(フランソワ・ルテリエ)はまさに脱獄を目指しているが、体ひとつで抜け出すには無理がある。そこで彼はDIYな脱獄作戦に取り組み始める。まず木でできた独房のドアは、食事の際にもらえるスプーンの持ち手の端で毎日地道に壊していく。さらに壁を登ったり降りたりするのに必要な12メートルほどのロープは周りにあるもので作ってしまう。縦に細長く破いた布をきつく三つ編みし、ベッドフレームのワイヤーをぐるんぐるんに巻けば、出来上がり。ここまでしても仲間からは時折逃げ出すなんて無茶だと言われるが、彼の意志は揺るがず、寡黙ながらもたった一つの目標を果たそうと目がメラメラと燃えている。

ちなみに本作の原題は『Un condamné à mort s'est échappé(逃げた死刑囚)』である。題名で結末をバラしてしまっているにも関わらず、画面に張り付いて逃げられるのだろうかと手に汗を握ってしまう。

(文/鈴木未来)

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