私のやりたいようにやるんだから!と言う車の話『クリスティーン』
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- キース・ゴードン,ジョン・ストックウェル,アレクサンドラ・ポール,ロバート・プロスキー,ジョン・カーペンター
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もし話すことができたら「私を痛めつける人がいたら、タダじゃおかないんだから!」とでも言いそうな車が映画『クリスティーン』(1983年)には出てくる。車には女性の名前がついていて、それがタイトルの「クリスティーン」だ。
話は高校生の主人公、アーノルド(キース・ゴードン)が、ボロボロの車(クリスティーン)をいかにも怪しげな見た目のオヤジから買い取るところからはじまる。車を買うことは、学校ではいじめられ、家では親の言いなりになっている彼なりの反抗のようで、もう何が何でもこの車は手放さないぞという雰囲気が漂っている。愛は盲目というがまさにそのような感じで、この車に惚れ込んだアーノルドはクリスティーンをピカピカに修理し乗り出すと、まるで車に操られているかのように変化していく。ナヨナヨ系キャラは、日に日にオラオラ系に。言っていることが若干狂気めいてきて、周りが心配するほど変わり果ててしまう。そんなのクリスティーンのしわざではないだろうと思ったのも束の間。クリスティーンがある日ハンマーなどでズタボロにされると運転手なしに犯人たちを自動運転で追いかけ回し、しまいには殺害してしまう。車が自分の意志で動くなんてありえないのだけれど、もうそうとしか思えない。まだまだこれからよ!そう語りかけるかのようにエンディングへとアクセルを踏む。
原作はスティーヴン・キング、監督はホラー映画の巨匠、ジョン・カーペンター。車がひとりでに人を殺すなんて安っぽいホラーに聞こえるけれど、割としっかり怖くて見応えがある。
(文/鈴木未来)