早期発症のアルツハイマーと生きること。『アリスのままで』

　ジュリアン・ムーアが第87回アカデミー賞で主演女優賞を受賞した『アリスのままで』。若年性アルツハイマー病を診断された50歳の大学教授と家族の物語で、涙なしでは見られない内容でした。

　コロンビア大学で言語学科の教授をしているアリス。彼女の50歳の誕生日には、3人の子供たちが駆けつけ、夫とも仲良しで順風満帆な生活を送っていました。しかし、彼女は講義中に言葉を忘れ、神経科へと向かうことに。そこで若年性のアルツハイマー病だと診断されます。徐々に記憶が喪失していき、コミュニケーションが困難になっても、結婚生活や親としての役割、仕事など、人生のあらゆる面でバランスを保とうと奮闘するアリス。しかし、そんなアリスでもアルツハイマーの脅威には勝てません。本作は、アリスが病気に打ち勝とうとしているわけではなく、病気とともに生きることに適用していこうという努力を描いています。

　アリスを演じたジュリアンは、役作りのために4ヶ月間ほどアルツハイマー病について研究したと言います。彼女はアルツハイマー病のドキュメンタリーを鑑賞し、アルツハイマー病の研究部長である博士と面会。長期介護施設やアルツハイマー病のためのサポートグループを訪問し、さらに、3人の若年性アルツハイマー病の女性に話を聞いたそうです。ちなみにジュリアンは、本作にも登場するアルツハイマーの記憶力テストも実際に受けたそうです。彼女はそのテストを合格したそうですが、そんな彼女が演じるアリスが徐々に記憶をなくしていくその姿に、涙が止まりません。その一方で、一生懸命生きることの大切さみたいなものも学ぶことができました。

（文／トキエス）