もやもやレビュー

君はひとりじゃない。誰かが見つけてくれる。 『ディア・エヴァン・ハンセン』

ディア・エヴァン・ハンセン (字幕版)
『ディア・エヴァン・ハンセン (字幕版)』
ベン・プラット,エイミー・アダムス,ジュリアン・ムーア,ケイトリン・デヴァー,アマンドラ・ステンバーグ,ニック・ドダニ,ダニー・ピノ,コルトン・ライアン,スティーヴン・レヴェンソン,スティーヴン・チョボスキー,マーク・プラット,アダム・シーゲル
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トニー賞、グラミー賞、エミー賞に選ばれたミュージカルの映画化。音楽を手がけるのは『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』のチーム。ということで、とにかく音楽がいい。先にサントラを聴いてから見たっていい。監督は『ワンダー 君は太陽』『ウォールフラワー』など、心を掴む作品群に定評のあるスティーヴン・チョボスキー。ブロードウェイで週8回も舞台に立ち続けたベン・プラット自身が映画版でも主人公を演じ、天才的なパフォーマンスを見せつけてくれる。きっと一曲目を耳にしたら、もう最後まで目が離せなくなると思う。

エヴァンは社交不安障害がある高校生。セラピストの助言で自分に宛てた手紙を書いているが、あるとき同級生の少年コナーにからかわれ、一枚の手紙を持ち去られてしまう。それからまもなくコナーが自殺。コナーの両親は息子のポケットからエヴァン宛ての手紙を見つけ、息子同士が親友だったのだと誤解する。エヴァンは咄嗟に嘘をつき親友のふりをし続ける......。エヴァンになりきり、お別れ会でパフォーマンスを披露し「人知れぬ場所で/忘れられた気がしたことは?」とこぼす。この作品の大きなテーマでもある、誰もが抱える「孤独」が渦となり、学校中を包む。彼のしていることは当然許されることではないのだが、どうしたことだろう。その嘘が嘘であって欲しくない。どうせなら、このままバレないでいてくれ。そう願ってしまう自分がいる。

ジュリアン・ムーアとエイミー・アダムス演じる母親たちがまた素晴らしい。親目線で描かれる喪失感と混乱。前に進もうともがく人間くさい演技に涙がこぼれた。

(文/峰典子)

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