もやもやレビュー

平和に読書するはずが、サバイバルゲームにはめられた『プラットフォーム』

プラットフォーム(字幕版)
『プラットフォーム(字幕版)』
イバン・マサゲ,アントニア・サン・フアン,エミリオ・ブアレ,ガルダー・ガステル=ウルティア
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

未知の世界へとぐんぐん進んでいくタイプか、あまり冒険はせず淡々と日々を送るタイプか。スペイン映画『プラットフォーム』の主人公、ゴレン(イバン・マサゲ)は、穏やかそうに見えて意外にも未知を恐れないタイプである。なにせ彼は禁煙をして本を読み切ることを目的に、得体のしれない「穴」と呼ばれる場所に半年間入居することを決める。入るまで、中での仕組みがあやふやなのがどうも怪しいが、とりあえず持ち込めるたったひとつのものに『ドン・キホーテ』の本を選び、晴れて入居した彼。

ところがいざ入ると、そこは読書なんてしているどころではない縦長の牢屋らしき場所だとわかる。ワンフロアにはベッド二つに洗面台だけがあり、階の真ん中には長方形の巨大な穴がぽかりと空いている。穴をするりと通り抜けるのは豪華料理が乗った動くコンクリートブロック。ただ、老人男性の同居人(各フロア1名)によると一番下の階に到達するまで食事は一切補充されないらしい。つまり下に行けば行くほど食事は減っていく。ちなみに階は全部で333ある。幸いゴレンは48階と悪くない配置なものの、同居人から月ごとに住む階は変わり、333階に行く可能性もあると知る。同居人も毎月交代制で、いつ狂気めいた人に当たるかわからない。禁煙をしようと単純な理由で入ったところが、この始末!この状況下でゴレンは誠実さを貫き通すのか。理性を失うのか。自分だったらどうするだろうとふと、考えてしまう。

(文/鈴木未来)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム