破滅的な愛の物語『ブルーバレンタイン』

　ライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズが夫婦役を演じたラブストーリー『ブルーバレンタイン』。2人が情熱的にキスをするジャケットが印象的なこの作品ですが、実はとっても悲しく心が痛くなるような破滅的な愛の物語でした。

　幼い娘フランキーを可愛がり、一緒に子供のように遊ぶ良き父、ディーン（ライアン・ゴズリング）と、病院勤めで多忙を極めているシンディ（ミシェル・ウィリアムズ）。2人はお互いに不満を抱えており、衝突を恐れていました。そんな2人の出会い、そしてロマンチックな期間と、すぐにでも崩れていきそうな夫婦関係を交錯させながら描いていくラブストーリー。

　本作、ディーンとシンディの口論のシーンがかなり多く含まれているのですが、これが目を背けたくなるほどリアルで痛々しいのです。実は本格的なシーンは、監督が即興演技にこだわったそうです。IMDbによると、監督はライアンに対し、ミシェルを説得するため（あるいは注意を引くため）にどのような手段を使ってもいいと指示し、一方でミシェルにはライアンとの口論から抜け出すためなら何をしてもいいと指示していたそうです。撮影現場では綱引きゲームのような駆け引きが即興で演じられ、ライアン本人も「楽しく、面白いプロセスだ」と語っていたようです。監督が生み出した綱引きゲームがこの映画をより現実的なものにしたのかもしれません。

　決して綺麗なラブストーリーではないですが、かつて愛した人に憤りや嫌悪という感情を持つようになる姿がストレートに映し出された、すばらしい作品だと思いました。

（文／トキエス）