もやもやレビュー

性犯罪被害の女性が過去のトラウマと向き合う『マリオネット 私が殺された日』

マリオネット 私が殺された日(字幕版)
『マリオネット 私が殺された日(字幕版)』
イ・ユヨン,キム・ヒウォン,キム・ダミ,イ・ハクジュ,イ・ハンウク,イ・ハンウク
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 韓国のスリラー映画『マリオネット 私が殺された日』。「実際にあった事件をもとに作られたフィクション」と冒頭につづられているこの映画は、ネット社会の闇や女性に対する人権問題など、多くの闇を扱った一本です。

 学生時代、思いを寄せる相手から集団強姦をされてしまい、ネットでその動画を流出させられてしまったミナ。加害者たちは彼女をマリオネットのように扱ったことから、世間では「マリオネット事件」と呼ばれ、韓国全土に衝撃を与えていました。やがて大人になったミナは過去を決別するためソリンという名前にかえ、高校教師の職にも着きます。愛する人との結婚も間近に控えて、幸せを手に入れようとした矢先、職員室で気を失ってしまいます。目が覚めると手首に赤く縛られた跡が......。さらには「マスター」と名乗る謎の人物から、下着姿の写真を送るよう脅迫されます。そして彼女の生徒である女学生にも被害が出たことから、彼女は封印していた過去と向き合い、「マリオネット事件」の当時担当だった刑事に連絡を取り合います。

 「胸糞悪い」「後味悪い」という作品は数々生み出されていますが、これもその手の一本。女性の立場から見て、映画の前半は思わず目を逸らしたくなるほどの暴行シーンが多く含まれます。しかし、物語は意外な展開へ。主人公のソリンが過去と向き合い、事件の真相を突き止めた時には、驚きにプラスちょっとした感動も。もちろん、脚色されているのだろうけど、もとになった事件が実際にあったんだと思うと、なんだか胸が心苦しいです。

(文/トキエス)

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