もやもやレビュー

当たり前とのさようならは難しい。『グッドフェローズ』

グッドフェローズ [Blu-ray]
『グッドフェローズ [Blu-ray]』
ロバート・デ・ニーロ,レイ・リオッタ,ジョー・ペシ,マーティン・スコセッシ
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『グッドフェローズ』(1990年)の主人公で、実在した故ヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)は、ある日を境にそれまでの日常と真逆のライフスタイルに放り込まれ、ずいぶんと苦労した人だ。

なにせヒルは若くしてマフィアに憧れ、幼い頃からマフィアの使い走りとして日々を送った後、自然とポール・シセロ(ポール・ソルヴィノ)を長とするギャングに属した。ステータス上、どこに行ってもVIP対応。高級な洋服を身にまとい、誰かを殺したり罪を犯したりすることは人生の早い段階で彼の日常となった。それがある事件を境に、ヒルは自分の身を守るためにもそれまでの日常と永遠におさらばし、政府の保護の下で生きることを選択する。ここまでが映画の話。

ヒルの苦労は、本作が終わったあとからはじまる。彼は政府より罪を犯さず「普通」に暮らすことが課せられるが、これがもう苦痛でしかたない。さらには自分の身を守ることと引き換えに仲間を裏切ったためその罪悪感も重くのしかかってきた。いろんな感情に耐え切れず、彼は再び犯罪に手を染め、永遠に行くはずのなかった刑務所へ......。挙げ句の果て、そこで二度殺されかけた。

奇跡的に生き抜いた先に舞い込んできたのが、マーティン・スコセッシ監督からの映画化の話だった。予期せぬ収入が入ることになり、ヒルは大喜び。ただそんなうれしいことが起きても麻薬取引はどうしてもやめられず、ヒルは息を引き取るまで刑務所を出たり入ったりしていたそう。アップダウンが激しすぎて心がすっかり滅入ってしまいそうな人生だが、あるインタビュー映像に映るヒルには妙な余裕があった。

(文/鈴木未来)

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