謎の遺言の秘密に迫る『灼熱の魂』
- 『灼熱の魂 [DVD]』
- ルブナ・アザバル,メリッサ・デゾルモー=プーラン,マキシム・ゴーデット,レミー・ジラール,ドゥニ・ヴィルヌーヴ
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本作のデジタル・リマスター版がスクリーンに甦るということで映画館に足を運ばずにはいられない映画ファンも多いはず。(8月12日より全国順次公開中)
2011年に公開された当時、最高のヒューマンミステリーと話題になりアメリカのアカデミー賞でも最優秀外国語映画賞にノミネートされた。
母親の謎の死後、突然双子の姉弟ジャンとシモンに謎めいた遺言と2通の手紙が渡される。遺言には存在すら知らされていなかった父親と兄を探しだして手紙を渡して欲しいというものだった。
この手紙を渡すために母親の数奇な人生と家族の宿命を探り当てることになる。
原作は戯曲だったということに鑑賞後に資料を読みながら驚いた。というのも、舞台劇が原作とは微塵も感じないほどにダイナミックな映像と、ストーリーのテンポの良さやミステリー性の絶妙なバランスで構成されているのだ。
本作の監督、脚本のドゥニ・ヴィルヌーヴは最近では2021年の『DUNE /砂の惑星』でアカデミー賞でノミネートされ大変話題になった。
『灼熱の魂』より後に発表されている作品『ボーダーライン』はカンヌ国際映画祭コンペ部門に出品され、『メッセージ』はヴェネツィア国際映画祭でプレミアム上映、日本でも東京国際映画祭の特別招待作品として上映された。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品は新作が出るたびに世界が注目しているホットな監督の1人なのだ。
本作を見終えたあとのなんとも言えない感覚。震えあがるほど見事な伏線の張り方だった。追いかける謎も父親と兄を探すことというわかりやすい2点に的がしぼられて、回収も多くを語らずしてスマートであった。数学者であるジャンヌに対してシモンが真実を告げるシーンの台詞はとても最高!
まだみたことない人に激推ししたい作品。
きっとカメラをまっすぐみつめる冒頭の少年の瞳を忘れることは出来なくなる。ドラマチックであり、最高のミステリーがそこにはある。
(文/杉本結)