もやもやレビュー

唯一無二のロマンティックムービー 『きみに読む物語』

きみに読む物語(字幕版)
『きみに読む物語(字幕版)』
ライアン・ゴズリング,レイチェル・マクアダムス,ジーナ・ローランズ,ジェームズ・ガーナー,サム・シェパード,ジェレミー・レヴェン,ジャン・サルディ,ニック・カサヴェテス,マーク・ジョンソン,リン・ハリス,アブラム・ブッチ・カプラン,マーク・ジョンソン
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裕福な令嬢と貧しい育ちの青年。格差のある男女の恋愛劇、という普遍的で、手垢のついたテーマでありながら『きみに読む物語』は、なぜこんなにも魅了するのだろうか。

ひとつには実話がベースに敷かれていることが関係しているかもしれない。夢のようなエピソードの数々は、原作者の妻の祖父母の身にほぼ実際に起きたことだというのだからすごい。胸をときめかせてくれる。そして何より、ノア(ライアン・ゴズリング)のキャスティングの妙。戦争と経済格差がふたりを阻むなか、どストレートに愛を伝える物言いに痺れるし、後悔を綴った手紙を送り続ける健気な姿(残念ながら読まれることはないのだが)もいい。労働階級らしいシャツ、革靴、キャスケット。そんなこざっぱりしたファッションが本当によく似合い、それはそれは無敵なのである。こんなのみんな好きになるでしょう、という感じ。ハーレクインか、はたまた「花とゆめ」なのか。

舞台は1940年の夏。サウスカロライナ州の架空の街、シーブルック。一時停止をしてしばらく眺めておきたいような、美しいカットが多いのもこの映画の特徴かもしれない。ひとつひとつのシーンが丁寧に撮影されているのを感じるし、白鳥が出てくる場面では、卵のときから準備を進めていたのだというから驚かされる。

さて、ライアンとアリー役のレイチェル・マクアダムスは、撮影中ずっと喧嘩していて犬猿の仲だったというが、撮影後には本当に付き合ってしまうというツンデレなエピソードも、これまた少女漫画のようでニヤニヤしてしまう。実にいい。

(文/峰典子)

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