楽しく生きるコツを教えてくれる『天才マックスの世界』

「時間がなくて好きなことができない......」そう思ったら、とりあえずウェス・アンダーソン監督の『天才マックスの世界』（1998年）に出てくるマックス（ジェイソン・シュワルツマン）を見てほしい。

野心に満ちた15歳の彼は、1日に24時間しかないことを忘れてしまうほど、たくさんの部活に所属している。切手と硬貨部（副部長）、討論部（キャプテン）、カリグラフィー部（部長）、蜂の世話係（部長）、マックス・フィッシャー演劇部（監督）など、数えると全部で19になる。全部の部活で大きな何かを成し遂げているわけではないものの、熱量だけは誰にも劣らず、周りの協力を得てものごとを実現させるのが得意。なかでも最も力を入れている演劇部ではベトナム戦争を描き、劇には自ら出演、さらにはダイナマイトを調達し道具として使うなどして、かなり本格的（？）に取り組んでいる。ただ肝心な学校の成績はかなり低め。実はすでに落第しておりそろそろ退学させられそう。彼は学校を辞めさせられることなく、大好きな部活動を続けられるのだろうか！

とにかく時間がないなどと嘆くよりも、先に手足が動いてしまうマックスの行動力は圧巻だ。無理やり興味をひとつに絞らなくても、やりたいことがあれば全部やればいい、そう教えてくれるような気もする。制限をかけず、成績も特に心配せず、興味の赴くままに生きる楽しさを背中で語る男、マックス。あれもこれもと貪欲に手を出し大忙しな割には、妙に余裕があるところがまたニクイ！

（文／鈴木未来）