もやもやレビュー

フュージョン料理で家族をつなぐ 『エイブのキッチンストーリー』

エイブのキッチンストーリー (特典なし) [Blu-ray]
『エイブのキッチンストーリー (特典なし) [Blu-ray]』
フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ
ポニーキャニオン
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心の拠り所であるはずの宗教が偏見や戦争を引き起こす......。人類が長い年月にわたり直面してきた問題である。『エイブのキッチンストーリー』で監督を務めたフェルナンド・グロスタイン・アンドラーデは、ユダヤ人とカトリック系ブラジル移民の三世。今作を制作するきっかけは兄からの「ユダヤ教の祝日をテーマに映画をつくってみたら」という言葉だったようだが、一度は躊躇し、すぐには取り組めなかったとインタビューで話しているのを読んだ。

彼の意識を変えたのは宗教学・神話学の教授であり作家のジョセフ・キャンベルの著書だったようだ。彼はスターウォーズの作品構造に大きく影響を与えたという人物だが、全ての宗教は仮面であり、万物に神が宿っており、真実は概念である(詳しくないので語弊があったらごめんなさい)ということを生前に書き綴っている。宗教の表面をなぞるものでなく、内側に宿る灯りのようなものを描きたかったのかもしれない。子どもの目線と料理というテーマを通して。

ブルックリンに生まれ育った、料理好きのエイブ(ノア・シュナップ)は、パレスチナ系の父とイスラエル系の母を持ち、宗派の違いによる家族喧嘩に頭を悩ませている。ある日ブラジル人シェフのチコと出会い触発されたエイブは、オリジナルのフュージョン料理を作って、家族を仲直りさせようと決心。少年が料理を通じて家族を見つめ直すなかで、異なる文化が引き起こす怒りや愛を知ることとなる。それは少年の成長物語でもあり、見守るわたしたちも少し成長させてくれるような、心にしみる作品なのである。

(文/峰典子)

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