このラブストーリー、やっぱり『普通じゃない』

『トレインスポッティング』（1996年）で世界的に注目を浴びた後、ダニー・ボイル監督がハリウッドデビュー作として手掛けたラブストーリー『普通じゃない』（1997年）は、タイトルに負けないほどいろんな意味で「普通じゃない」。

ざっくりいうと、社長令嬢（キャメロン・ディアス）と、彼女を誘拐した元清掃員（ユアン・マグレガー）を二人の天使がくっつけようとする話である。天使が登場するあたりからおかしな匂いがするが、実際の話はこの一文から想起されるものよりもきっともっと変わっている。

まず天使なんて聞くと、静かにこっそりと何かを仕掛ける様子を想像してしまうが、彼らの仕掛けはやけに仰々しく、くっつけようとしている二人の命を脅かすほど恐ろしい。怖い割には愉快だが、純真無垢な天使といった印象はあまりない。さらには誘拐と聞くと、誘拐した側のほうが強いのだろうとつい想像してしまうが、元清掃員の男性は少々弱気（というか、ただのいい人）で誘拐なんて全く性に合わず、誘拐された側の社長令嬢に「正しい誘拐のしかたは、こうよ」なんて指導を受けはじめる始末。天使たちは無事ふたりをくっつけられるのだろうか。あまりにも境遇の違う二人だが、本当に恋になんて落ちるのだろうか。最後までかなり怪しい。ケラケラ笑いながら画面に向かってツッコミを入れたいときには、これくらい変わったラブストーリーがちょうどよさそうである。

（文／鈴木未来）