もやもやレビュー

【無観客! 誰も観ない映画祭】第7回 『Mr.タスク』

Mr.タスク スペシャル・プライス [Blu-ray]
『Mr.タスク スペシャル・プライス [Blu-ray]』
ジャスティン・ロング,マイケル・パークス,ハーレイ・ジョエル・オスメント,ジェネシス・ロドリゲス,リリー=ローズ・メロディ・デップ,ケヴィン・スミス
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2014年・カナダ(日本公開2015年)・102分
監督・脚本/ケヴィン・スミス
出演/マイケル・パークス、ジャスティン・ロング、ハーレイ・ジョエル・オスメント、ジェネシス・ロドリゲスほか
原題『TUSK』

***

 主人公はロスでポッドキャスト番組を受け持つウォレス。扮しているのは『ギャラクシークエスト』(99年)でデビューしたジャスティン・ロング。ドリュー・バリモアの元ダンナです。下衆なシモネタを掛け合う相方のテディは、かつて『シックス・センス』(99年)や『A.I.』(01年)などで天才子役と称されたハーレイ・ジョエル・オスメント! ヒゲもむさい立派なオタク面になっています。

 番組では人気ユーチューバーのキル・ビル小僧が日本刀を振り回し、誤って自分の片足を切断してしまう映像を紹介し二人で嘲笑します。ウォレスは良識あるカノジョさんから「人の不幸を笑い物にすると後でバチが当たるわよ」と忠告されますが、番組のネタにしようとキル・ビル小僧が住むカナダの自宅までアポなし突撃します。しかしキル・ビル小僧はその日本刀で自殺を遂げていました。

 ヤケ酒を煽っていたウォレスは、バーのトイレで「老人の海洋冒険談を聞かないか?」というチラシに目が留まります。カナダくんだりまで来て手ぶらで帰れないウォレスは、人里離れた郊外の豪邸で車椅子生活を送る広告主ハワード・ハウを訪ねます。戦時中は軍艦の料理長だったハワードの体験談はどれも面白く、遭難し漂着した無人島でセイウチに体を温められ助かり、命の恩人に「Mr.タスク(牙)」と名付け半年間を共に過ごした話を聞いた後にウォレスは寝落ちします。出された紅茶に睡眠薬が入っていたのです。

 ウォレスが目を覚ますと車椅子に縛られていて、左足がキル・ビル小僧と同様、膝から下がありません。向かいに座っているハワードがその様子を見て嘲笑い、すっくと車椅子から立ち上がり普通に歩き出すではありませんか。「イカレじじい! 老いぼれの変態野郎!」とウォレスになじられカチンときたハワードは、顔面にグーパンチを入れ「セイウチは美しい動物だ。セイウチになりきれ。人間はセイウチなのではないか?」と完全にイッチャッテます。この怪老人を演じたマイケル・パークスは、『キル・ビル』シリーズや『㏌グラインドハウス』シリーズなどクエンティン・タランティーノ作品の常連です。

 このヤバすぎる状況にウォレスは、何とか見つけ出した自分のスマホからカノジョさんと相方テディに電話をかけますが、両人とも出ないので監禁場所を留守電に入れます。しかしその頃2人は一緒に寝ていました(笑)。ウォレス、バチ当たりまくりです。

 翌日、ハワードはウォレスの右足も切断し、両脇に二の腕を縫い付けます。何をしたいのか薄っすらわかってきましたね。その間ウォレスに語って聞かせる孤児院時代の思い出話が、また悲惨でした。ハワードは幼少期に両親を目の前で強盗に刃物で滅多刺しされ、孤児院では夜警・ナース・修道女とあらゆる大人達から殴る蹴るの毎日。ゲイの司祭にはハワード曰く「子供の直腸と唇を使った」性的虐待を受けていました。歪んで当然です。

 さてハワードの屋敷にはセイウチと過ごした無人島の磯を再現した一室があり、そこに変貌を遂げたウォレスがいました。シルエットはまぎれもなくセイウチですが、全身の皮膚は肌色でフランケンシュタインの人造人間のようにツギハギの縫い目だらけ。ウォレスのままの顔にはセイウチのヒゲと立派な牙が装着され、舌を抜かれ「ギャオ~ギャオ~」と鳴いています。悪夢のような光景です。そんなウォレスにハワードは「セイウチなら泳ぎを覚えろ」とプールに落とします。必死にヒレ足をバタつかせて溺れるウォレスは、底に沈んでいる数体のセイウチ人間の失敗作を見て愕然とします。食事も生魚しか与えられません。

 その頃、留守電を聞いたカノジョさんとテディがウォレスの捜索を始めていました。地元警察は親身になってくれず、元刑事だった私立探偵ギー・ラポワンテに依頼します。ラポワンテは警察時代から大量拉致監禁事件を追っていました。その被害者と思われる異様な外科手術を施した変死体が上がったことで、ウォレスの件と同一犯ではないかと睨んだのです。オナラだのウンチだのを会話にチョイチョイ挟んでくる変人ラポワンテですが、只者ではない強烈な存在感を放っています。実はラポワンテ役は、特殊メイクで正体を隠した某超大物俳優でした。マスコミ試写会でシークレットにされ、タイトルロールにもノンクレジットです。予備知識なしで作品を見た筆者は「えっ、あの変な探偵って○×だったの!?」と数年後に知って驚愕しました(遅いよ)。でも、もう過去の作品ですしネットにも出ているので時効ですね。本文のラストでバラしますので、自分でDVDを見て誰だか当てたい方は読まないようにしてください。

 さてハワード邸では、全裸になってウォレスのヒレを手に取りプールの中を歩き回るハワードが恐るべき事実を語り始めます。何とハワードは、救助されるまでMr.タスクを殺して食って生き延びていたのでした。そしてハワードはセイウチをかたどった着ぐるみを怪獣役者のように着込み、ウォレスに無理やり殺し合いを挑みます。ウォレスはセイウチの姿はしていてもショッカー怪人のように強くなったワケではなく、単に動き辛いだけでドタバタな格闘が展開します。ここらへんになると、見ている方も何を見せられているのか思考が停止します。そこへラポワンテ達3人が踏み込み、変わり果てたウォレスに再会したカノジョさんはショックで泣き崩れてしまいます......。

 この作品で、仕事中にスマホをいじる態度の悪いコンビニのバイト女子高生が出てきますが、ブスな方はスミス監督の娘ハーレイ・クイン・スミス。カワイイ方はジョニー・デップの娘リリー=ローズ・デップです。二人はプライベートでも仲良しで、スミス監督は彼女らを主役に『コンビニ・ウォーズ バイトJK VSミニナチ軍団』というスピンオフ作品を2年後に撮ります。再びラポワンテ探偵も出てきますが......はい、その正体はリリーのパパ、ジョニー・デップでした! カワイイ娘のためにノリノリだったようです。

(文/シーサーペン太)

【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

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