もやもやレビュー

胸が苦しくなるほどの臨場感『ユナイテッド93』

ユナイテッド93 [Blu-ray]
『ユナイテッド93 [Blu-ray]』
シェエン・ジャクソン,ジョン・ロスマン,クリスチャン・クレメンソン,ポール・グリーングラス
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 2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ。この事件で4機もの飛行機がハイジャックされましたが、ユナイテッド航空93便だけは唯一テロリストの目標地点に到達しませんでした。そんな93便の機内で、一体何が起きていたのか。生存者は0でしたが、遺族や関係者などの徹底取材のもとリアルに再現された映画『ユナイテッド93』では、離陸から墜落までの様子が描かれています。

 ワシントンD.C.にあるアメリカ合衆国国会議事堂への突入を目的としたテロリスト4人が、ユナイテッド93便にそれぞれ単独で乗り込みます。スーツを来た者、カジュアルな格好をした者などテロリストたちは離れた席に座って、機内の様子を伺っていました。93便は予定よりは遅延して離陸。その間に、アメリカン航空11便がハイジャックされワールドトレードセンターに衝突。航空管制官たちはパニックに陥ります。

 一方、93便では、テロリストたちが合図をきっかけに行動開始。テロリストたちは1人の乗客の首をナイフで刺して殺し、他の乗客を怯えさせます。さらに爆弾をお腹に巻きつけ、操縦室に侵入し、パイロットと副パイロットを殺害。いつ殺されるかわからない緊張感の中、震えて祈りを捧げる乗客たち。電話を使い家族に最後のメッセージとして「愛している」と伝えるシーンは、本当に心痛みました。そして「このままではみんな死んでしまう......」と悟った乗客たちは力を合わせてテロリストたちへの反撃を決断するのです。

 本作には1人アジア系の男性が乗客している姿も描かれているのですが、後で調べてみると93便には日本人の大学生が搭乗していたそうです。本作は無名の俳優が起用され、航空管制官や航空関係者は、実際に航空会社で働いている人が採用されたそうです。遺族や関係者へのリサーチを徹底的にしたからこその、臨場感がとてつもない。テロの脅威が、スクリーン越しにダイレクトに伝わってくる一本でした。

(文/トキエス)

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