影が薄いと危険?『嗤う分身』
- 『嗤う分身 [DVD]』
- ジェシー・アイゼンバーグ,ミア・ワシコウスカ,ウォーレス・ショーン,ヤスミン・ペイジ,ノア・テイラー,リチャード・アイオアディ
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覚えてもらえないというのは寂しいものだ。たとえば「定期的に顔を出す飲食店の店主になかなか顔を覚えてもらえない!」は誰にでも起こりうるちょっと切ないことかもしれない。『嗤う分身』(2013年)の主人公、サイモン・ジェームズ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、そんな悩みがちっぽけに思えてくるほど影が薄い。入社7年目にも関わらず、同僚のほとんどが彼の顔も名前も覚えていない。彼の母親でさえ、サイモンが同僚と出ているテレビCMを見て「で、あなたはどれ?」と言っている。
そんなある日、サイモンと瓜ふたつのジェームズ・サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)が平然と入社してくる。双子のいないサイモンにとっては目を疑う出来事だが、ショックなくらい誰も二人がそっくりだということに気づかない。さらに弱気で小声のサイモンとは一変、ジェームズは自信とカリスマ性に満ち溢れていて、早くも社内の人気者になってしまう。サイモンが密かに想いを寄せるハンナ(ミア・ワシコウスカ)までジェームズに惹かれはじめると、さすがのサイモンも不安と不満ではち切れそうに。サイモンの運命やいかに?
監督は風変わりなラブストーリー『サブマリン』を描いたリチャード・アイオアーデ。地域を特定したくないという彼の思いから、ジャッキー吉川とブルー・コメッツの名曲をはじめ、アジア生まれのグループ・サウンズやサイケ・ロックがバックに流れる。スリラー映画と呼ばれつつもムードは軽快かつコミカルで、グイグイと引き込まれていく一本である。
(文/鈴木未来)