遺族から感謝される連続殺人鬼『ドクター・デスの遺産－BLACK FILE―』

　「さよならドビュッシー」で「このミステリーがすごい！」大賞を受賞した中山七里の小説が原作の『ドクター・デスの遺産－BLACK FILE―』。安楽死を手口にし、遺族から感謝されるという殺人鬼を描いており、人の道理について深く考えさせられるようなストーリーでした。

　破天荒な刑事で一人娘を育てる父・犬飼隼人（綾野剛）と、冷静沈着な刑事、高千穂明日香（北川景子）。警視庁捜査一課No1コンビの2人が挑むのは、安楽死を手口に、病気に苦しむ患者を手に掛ける連続殺人鬼"ドクター・デス"の事件。聞き込みを開始したところ、被害者を苦しませることのなく、安らかに眠らせてくれたとして、遺族はドクター・デスという存在に感謝の意を示すのです。自身も重い病と闘う娘を持つ犬飼は、この安楽死という手口の殺人に苛立ちを隠せず、それを冷静に沈める高千穂。捜査の中で2人が突き止めた"ドクター・デス"の目的とは......。

　劇中では、実際にモデルとなったアメリカの医師、ジャック・ケヴォーキアンの名も登場。130人もの患者を安楽死させたとして、「ドクター・デス」と呼ばれたジャックは、有罪判決が下され、仮釈放後も亡くなるまで安楽死を肯定し続けました。

　治ることのない辛い治療を続けるがあまり、看病する側は金銭的に余裕がなくなり精神的にも弱まっていく。そんな中「楽にしてくれ」と愛する人に頼まれたら......？ 辛い決断を余儀なくされる遺族たちの気持ちも深く理解してしまうこの映画。あなたは一体どう感じますか？

（文／トキエス）