青春音楽と人のあたたかさ『サヨナラまでの30分』

　新型コロナウイルスのパンデミック発生後、以前よりも人間関係を作ることが難しいと感じ、「どうやって友達を作っていたのだろう？」と悩む方も少なくないはず。昔は気軽に参加していた飲み会も、なんだか億劫になり家に1人でいる方がいいや......という考えが普通になっちゃった。でも寂しい！ と、そんな方にぜひおすすめなのは、青春ラブストーリー『サヨナラまでの30分』。『るろうに剣心 最終章 The Final』で素晴らしいアクションを披露した新田真剣佑と、人気バンドDISH//でボーカルも務める北村匠海のW主演の本作、「孤独なときに青春感じて逆に悲しくなりそう」と思うほど綺麗な音楽とバンドマンの友情が描かれているのですが、意外にも自分の人間関係を見直したくなる一本です。

　友人もおらず、人付き合いを避けてきた大学生の颯太（北村匠海）は、ある日ひとつのカセットテープを拾います。何気なく再生してみると、なんと彼の体の中身がバンドマンのアキ（新田真剣佑）と入れ替わるという不思議な現象が発生。アキはそのテープを遺し1年前に亡くなっていたのです。テープが再生されている30分だけの間だけという限定的なものですが、アキは颯太の体を借りて、かつて自分がボーカルを務めていたバンドECHOLLのメンバーに会いに行きます。メジャーデビューを目前に解散したバンドをまた再結成させるべく、アキは颯太の体を共有しながらポジティブにアプローチしていきます。一方、これまで1人で音楽を作っていた颯太は、仲間と音楽をやる楽しさに気づき、次第にメンバーたちに打ち解けていきます。

　本作の最大のポイント、それは新田真剣佑も北村匠海も歌が無茶苦茶うまいということですが、その一方で、現在孤独を感じている方は、颯太の気持ちが痛いほどわかるはず。でも人付き合いが億劫になっていた彼が、アキと体を共有するという不思議体験から見つけ出した、思わず涙する人間関係にも注目。本作を見れば、きっと誰かと繋がりたくなるはず。前向きに人間関係を築き上げていきたいと、背中を押してくれる映画をお探しの方はぜひ。

（文／トキエス）