もやもやレビュー

現実と妄想の境目がにじみだすとき 『マシニスト』

マシニスト (字幕版)
『マシニスト (字幕版)』
クリスチャン・ベール,ジェニファ・ジェイソン・リー,アイタナ・サンチェス=ギヨン,ジョン・シャリアン,ブラッド・アンダーソン,スコット・コーサー
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兎にも角にも、クリスチャン・ベールの浮かび上がるあばら骨に目がいってしまうのだが、それもそのはず。睡眠障害に悩み、痩せ衰えていく男を演じるために30キロ近くも減量して挑んでいるのである。その気合いは半端ない。1日の食事は水とりんご、ツナ缶ちょっと、そしてコーヒーだけ。そんな生活を4か月送り、体重を54kgまで落とした。ちょっとした運動でも疲れるため、身体を動かすのも億劫になり「まるで自分の体を捨て去ったような感じだった」という。

そんな肉体で向き合うテーマとは「不眠症」。1年に及ぶ不眠症に悩む機械工・トレバーの周囲で、不可解な出来事が次々と起こりはじめる。謎の男に追われているような形跡も。自分は何者かに狙われているのか? それとも何か、大きな陰謀に巻き込まれたのか? 否、精神がおかしくなってしまったのか?このあたりのトレバーの心理描写がリアル。伏線の回収がきっちりされるので、曖昧に終わらないところも良い。

クリスチャン演じるトレバーの痩せこけた姿は、どこか幽霊のようで、いつか半透明になり消えてしまうのでは心配になるほどである。しばらくは健康的に過ごしてほしい、と、誰もが思ったそんな矢先に、ベールを待ち受けていたのが、半年後の『バットマン・ビギンズ』の撮影。今度はピザとアイスクリームを食べまくって45kg増量。作品毎に増減を繰り返していた彼だが、もう無理ができないと、今後は過激な体重調整をしない意向を見せている。長く演技を続けてもらうためにもご自愛頂かなければ、と思う次第である。

(文/峰典子)

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