もやもやレビュー

残忍なシリアルキラーの温かな記憶『テッド・バンディ』

テッド・バンディ(字幕版)
『テッド・バンディ(字幕版)』
ザック・エフロン,リリー・コリンズ,カヤ・スコデラーリオ,ジョン・マルコヴィッチ,ジョー・バリンジャ―,マイケル・ワーウィー
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連続殺人犯を指す「シリアルキラー」という言葉がある。ミステリー好きなら、ドラマや小説なんかでも馴染みがあるだろう。このシリアルキラー、元FBI捜査官のロバート・K・レスラーが、テッド・バンディ(Theodore Robert Bundy、全米で最も有名な殺人犯と言われている)を表すために1984年に提唱した単語とされている。

その名をつけた映画『テッド・バンディ』。さぞ残忍で目も当てられない映画に仕上がっているのだろう、と思ったのだが、そうではない。彼の恋人だったエリザベス・クレプファー(リリー・コリンズ)の回顧録を基に、テッド・バンディ(ザック・エフロン)の優しく温かな思い出を中心に描かれる、異色のミステリーである。彼の本性は徐々に明らかとなるのだが、その人当たりの良さと巧みな話術、爽やかなルックスから、どうしてだか完全には疑うことができない。ヒロインと同じ目線で「もしかしたら冤罪なのかもしれない」と、うっかり劣悪な殺人鬼を受けていれてしまいそうになるのだ。

ストーリーはほぼ実話である。色男だったテッド・バンディに民衆は色めきだった。死刑判決が下された裁判は異例のテレビ中継、傍聴席には女性が押し寄せ、多くの人々が無罪と信じていたという。判事は「君の頭脳ならいい弁護士になれた」「君に対して敵意はない。それは断言する」と言い切っているシーンがあるが、これらのセリフは裁判記録に基づいているという。判事も頭のどこかで信じきれなかったのかもしれない。あなたも一度騙されてみてはどうだろうか。

(文/峰典子)

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