『ワン・モア・ライフ!』をみて、大事な人との関係について考えた。
- 『ワン・モア・ライフ!(字幕版)』
- ダニエーレ・ルケッティ,ダニエーレ・ルケッティ,フランチェスコ・ピッコロ,ピエールフランチェスコ・ディリベルト,トニー・エドゥアルト,レナート・カルペンティエーリ,アンジェリカ・アッレルッツォ,フランチェスコ・ジャンマンコ
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もし死後にロスタイムがあるとしたらどうしますか?
本作は、思いがけず人生のロスタイムを手に入れた中年男性パオロが、リアルタイムで残された時間を家族との関係修復に奔走するドタバタコメディです。
原作は、フランチェスコ・ピッコロの小説で、『ローマ法王になる日まで』のダニエーレ・ルケッティ監督が映画化しました。2019年製作。
イタリア・シチリア島のパレルモに住む中年男性パオロは、通勤途中に、いつものようにスクーターで身勝手な運転をし、それが仇となり交通事故で即死してしまいます。予想外に短い寿命に納得がいかず、天国の入口で猛抗議。すると、パオロが健康のためにと飲んでいた"スムージー"が計算されていなかったという理由で、再計算されたのち、92分間だけ寿命が延びることに。とはいえたったの92分。この短い時間で、自分勝手で家族をないがしろにした生き方を悔い改め、人生のやり直しを試みることにします。
パオロは、生前、後先考えずに妻アガタのママ友や仕事の関係者と関係を持ったり、育児も家事も妻に押し付けやりたい放題でした。そんなパオロが、突然大好きなサッカー観戦を放棄し、センチメンタルになって家族四人で過ごしたい、愛してるなどと言ってきますが、当然しらける妻や娘アウオラ、息子フィリッポ。そりゃそうです。まさか92分後に夫(パパ)が死ぬなんて誰も想像するはずもなく...。
この温度差はもちろんのこと、生前自身がいかに家族をないがしろにして自分勝手に生きてきたかをこのタイミングで痛感。しかし刻一刻とタイムリミットが迫る中、天国の役人の監視や邪魔が入りながらも、どうにか家族との時間を持ち十分に愛を伝えたいと奔走するパオロ。
死後にロスタイムがあったら、それこそ自分のしたいことだけに費やすと思いますが、生前してこなかった悔いからとは言え家族のために時間を費やすのは、裏を返せばパオロにとって家族がやっぱり大切な存在なんだと思いました。短い時間で関係を取り戻そうというのは虫が良い話ですが、自分に正直なパオロだから許せてしまう部分もあるのかも。でも、やっぱり自分にとって大事な存在なら、日ごろから良い関係を築いていたいものです。いつ何が起きるかなんて誰にも分からないですもんね!
余談ですが、作中、「死神ですら間違えるのだから間違いを恐れる必要はない。人間は間違わなくなったら終わりだ。人生とは"取るに足らない幸せの瞬間"からなるものなのだから」とありました。失敗することを過剰に恐れがちな筆者にはとても刺さる言葉でした。あと、スムージーは飲んでおこうと思った次第です、悪しからず。
(文/森山梓)