理想的な教師像が見られます!『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』
- 『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』
- マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール,アリアンヌ・アスカリッド,アハメッド・ドゥラメ,ノエミ・メルラン,ジュヌヴィエーヴ・ムニシュ
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事実は小説より奇なり。最近実話ばかり好んで見ている理由です。本作は不思議というわけではありませんが、感動し、ただただすごいな(語彙力...)と思わされたお話です。
2014年に製作された本作は、生徒役で出演しているアハメッド・ドゥラメが、18歳の時に、監督のマリー=カスティーユ・マンシオン=シャールへ送った一通のメールから映画化されたそうです。アハメッドの熱意に打たれた監督は、ふたりで共同執筆をしたそうです。そして数々の映画祭で話題になりました。
貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校が舞台。様々な人種の生徒が集められた落ちこれぼクラスに、歴史教師アンヌ・ゲゲン(アリアンヌ・アスカリッド)が赴任します。アンヌは「教師歴20年。教えることが大好きで、退屈な授業はしないつもり」と自信を見せる、熱意ある先生です。歴史の裏に隠された真実や、立場による物事の見え方の違い、学ぶことの楽しさについて教えようとします。が、生徒は相変わらず問題ばかり起こしていました。
そんな中、先生は生徒に「レジスタンスと強制収容所についての全国コンクール」に参加しないかと持ち掛けます。しかし、「アウシュヴィッツ」という難しいテーマに彼らは反発します。
それでも、彼らなりに、コミックや「アンネの日記」「シンドラーのリスト」など手に取りやすいものを足がかりに少しずつ興味を持ちます。映画やポスターからヒントを得たり、先生引率のもとアウシュヴィッツに関する記念館で資料をみたりと、より深く調べていきます。
また、強制収容所で生き残った、レオン・ズィゲルさんを呼んで、生き証人の実体験を聴くという貴重な経験もさせてもらいます。生存者自身やその家族に起きた、とても恐ろしく、悲惨な体験を生の声で聴き、思わず涙を流す生徒も...。この機会をきっかけに、彼らに変化がみられます。個々で調べるものの中身がなかったり、同じテーマだということだけでぶつかっていたりと上手くいかなかった研究も、皆で結束して伝えていかなければならないと、これまでが嘘だったかのように、一致団結します。
問題児ばかりが集まって成績も悪く、授業にもならなかった学生たちの変化は目覚ましいものがありました。手の施しようもなかった時を見ていただけに、見事コンクールの最終審査まで進んじゃうなんて驚きだし、本当に感動しました。なにより、どんなにうまくいかなくても、「あなたたちを信じているのは私だけ?みんななら、このテーマを語れるはず」と最後まで学生たちを信じ、励ましてくれた先生の偉大さたるや。
落ちこぼれでも問題ばかり起こしていても、変わらず生徒の力を信じてくれる先生って素敵です。そんな先生に出会えた生徒は幸せですよね。ちなみに、生徒の27人中20人が優秀な成績で卒業したそうです。また、冒頭にも書いた共同執筆をしたアハメッドは脚本家・俳優になっているし、このような結果が、先生と出会えた奇跡を物語っていますよね!素晴らしい...!
(文/森山梓)