もやもやレビュー

実際に起きたテロを"体感"する『ホテル・ムンバイ』

ホテル・ムンバイ [Blu-ray]
『ホテル・ムンバイ [Blu-ray]』
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 2019年に公開された映画『ホテル・ムンバイ』。2008年に発生したインド・ムンバイ同時多発テロで、占拠されてしまった五つ星ホテル「タージマハル・パレス・ホテル」で起きた出来事をリアルに映画化。まるでその場にいるような現実味のある描写に、息をすることさえ忘れてしまう一本です。

 2008年11月、インドのムンバイで同時多発テロが発生。映画館やレストラン、駅など人が集結しやすい場所で銃が乱射されていきます。セレブたちが訪れることでも有名な五つ星ホテルには、助けを求め血だらけの人が押し寄せます。セキュリティは、人々を救出するためにホテルの中へ誘導しますが、その中にはテロリストたちも紛れ込んでいました。テロリストたちは皆少年で、ホテルに入り、淡々と銃を組み立て、まるでゲームのように弾丸を放っていくのです。

 「お客様は神様」をモットーに働いていたホテルマンたちは、宿泊ゲストの命を守るために、裏口の通路から誰にも知られていない部屋へと必死で案内します。一方で、アメリカ人観光客のデヴィッドは、部屋に取り残された生後まもない赤ちゃんとベビーシッターの無事を確認するため、テロリストたちが見回りする中、なんとか部屋へと向かっていきます。

 見つかったら即射撃。そんな緊迫した状況の中、赤ちゃんの泣き声を必死に抑えながらクローゼットの中に隠れるベビーシッター。犯人に銃を突きつけられながら、客室にドアを開けるよう電話で指示しなければならないフロント担当の女性スタッフ。絶望的なシチュエーションをそれぞれの視点から描いており、どれも衝撃的で言葉を失ってしまいます。

 実話をもとに描いた『ホテル・ムンバイ』。テロの脅威が身に染みるとともに、もし自分がテロにまきこまれたら......という想像が掻き立てられる一本です。

(文/トキエス)

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