もやもやレビュー

グロくて怖いのになぜか笑える『人生スイッチ』

人生スイッチ [DVD]
『人生スイッチ [DVD]』
ダリオ・グランディネッティ,リタ・コルテセ,フリエタ・ジルベルベルグ,レオナルド・スバラーリャ,リカルド・ダリン,オスカル・マルティネス,エリカ・リバス,ダミアン・ジフロン
ギャガ
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ノロノロ歩いていたら、背後からスタスタ歩み寄るおじさんにわざとかかとを踏んづけられたことがある。あまりにも一瞬で呆然としてしまったが、喧嘩っ早い人ならカチンと来て、怒鳴り散らしていたかもしれない。でも、果たしてその怒りをどこまで持っていくだろうか。

アルゼンチン映画『人生スイッチ』(2014年)に含まれる6つのショートストーリーには、最初から、あるいはある出来事をきっかけに怒り狂う人物が登場する。あらゆる人物が怒りに取り憑かれている様子を二時間も見るなんて、ずいぶん不愉快に聞こえるかもしれない。ところが彼らがあまりにも度を越した怒り方をするので、(顔は多少なりとも引きつるものの)途中から不思議と笑えてくる。

人は爆発する場面や相手を選び、おおむね、感情をコントロールして生きている。そこで監督のダミアン・ジフロン氏は、本能の赴くままに思いっきり暴れ出すのも一種の快楽...という考えをあえて表したかったという。そう言われてみると、たしかに彼らは一線を超えることで、不思議なハイに乗っ取られているようにも見えてくる。

現実で起きたら絶対に笑えない話ばかりだということは、この場をもって忠告しておきたい。

(文/鈴木未来)

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