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火山に消えた幻の街と恋『ポンペイ』

ポンペイ [Blu-ray]
『ポンペイ [Blu-ray]』
キット・ハリントン,エミリー・ブラウニング,キャリー=アン・モス,キーファー・サザーランド,ポール・W・S・アンダーソン
ギャガ
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かつて桃源郷と言われたポンペイは、イタリアの南部、ナポリの南にかつてあった地方都市である。ギリシャとローマの文化を兼ね備え、文化発展に恵まれていた。演劇や絵画、音楽にスポーツ、教育、哲学を嗜み、街にはレストラン、銭湯、闘技場までも揃う。午前中は仕事、午後はゆっくりと食事を楽しみ、夕方は銭湯へ。週末の夜は劇場に出向く。その暮らし、なんと優雅なことか。そんなポンペイの街は、ある日突然、幕を閉じる。西暦79年のことだ。

『ポンペイ』(2014)でポール・W・S・アンダーソン監督が描いたのは、街が火山に没した瞬間である。ローマ人に一族を滅ぼされた騎馬族の生き残りで、グラディエーターとして成長したマイロと有力者の娘の、身分差の恋。しかし、カッシアは、マイロの一族を滅ぼした上院議員に婚約を迫られていた。そんな矢先、火山が噴火。マイロは愛するカッシアを守れるのだろうか......。『バイオハザード』のポール・W・S・アンダーソン監督なので、さながら火山版タイタニックといったところの恋愛劇なのだが、ヴェスヴィオ山の噴火の描き方は圧巻。欲をいえば、もっと街の人に寄り添った暮らしのシーンも見てみたかったが。主役マイロを演じるのは「ゲーム・オブ・スローンズ」のジョン・スノウでおなじみのキット・ハリントン。

ポンペイの街が発掘された時は、すでに噴火から17世紀が経っていた。その瞬間に閉じ込められた食べかけのパン、乗っていた馬までもがそのまま発掘され、古代ローマ人を知る手がかりとなっている。丸ごと保存されたタイムカプセルなのだ。なんて悲しく、なんてロマンティックなのだろう。

(文/峰典子)

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