凶悪殺人犯に翻弄された三人の男たち 『ゾディアック』
- 『ゾディアック 特別版 [DVD]』
- ジェイク・ギレンホール.マーク・ラファロ.ロバート・ダウニーJr.アンソニー・エドワーズ,デビッド・フィンチャー
- ワーナー・ホーム・ビデオ
- >> Amazon.co.jp
- >> HMV&BOOKS
日本で有名な未解決事件といえば、三億円事件とか、グリコ森永事件などがあるが、アメリカでは<ゾディアック事件>というものがある。1966年から1974年にかけて6人の男女が白人の男に襲われ、猟奇的な方法で殺害された事件だ。自作の暗号を駆使するなど知的水準が高かったほか、電話で自らの犯行を通報するなどマスコミを弄ぶ態度に、国民の注目を大きく集めた。現在も未解決。
『ゾディアック』は、事件や犯人そのものにフィーチャーするのではなく、事件に関わった男たちをテーマとしたデヴィット・フィンチャー作品である。巻頭で殺人事件が起き、それを追う記者や警察の様子が163分(!)にわたり描かれていく。
犯人からの手紙を受け取ったサンフランシスコ・クロニクル紙の記者ポール・エイブリー(ロバート・ダウニーJr.)、暗号に強い関心を寄せる漫画家のロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)。サンフランシスコ市警の刑事デイブ・トースキー(マーク・ラファロ)。三人が徐々にゾディアック事件に引き込まれていく様子は、鳥肌モノで見応えあり。各者各様、その異質な犯人像にのめり込むあまり、文字どおり人生を狂わされてしまうのである。
ちなみに、51年間誰も解けなかったゾディアックの暗号の一つ「通称:Z340」が、昨年12月に米国・オーストラリア・ベルギーの一般人からなる暗号解読チームによって解読されたという。内容は読者を馬鹿にしたくだらないものだったが、もしかすると半世紀の時間を経て、氷山のかけらが溶け始めたのかもしれない。
(文/峰典子)