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原作ファンも必見! 深く考えさせられるサスペンス作品『ファーストラヴ』

『ファーストラヴ』 2月11日(木・祝)公開

人間誰しも心の奥底では誰かに愛されたいと願っている。そして、本当に愛する人が自分の前にいつかはやってくるのだろうか?という疑問をもって生きている。
だけど、なにかを愛することについて素直に表現できる人間ばかりではない。愛情の形はとても複雑で人間の数だけ種類や表現方法もあるのかもしれない、と深く考えさせられる作品であり、そこに殺人事件が起こることでサスペンスとしても楽しめる。

川沿いを血まみれで歩く女子大生球菜(芳根京子)が父親殺しの容疑で逮捕された。球菜の「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉は世間を騒がせる。そんな女子大生を取材する公認心理士・由紀(北川景子)と由紀の過去を知る弁護士・迦葉(中村倫也)の2人は球菜への面会を重ねていく。2転3転する供述のなか、少しずつ明らかになる真実とともに由紀の過去も明らかになる。真実の先に見えるものは一体なんなのか...。

芳根京子(聖山環菜).jpg
北川景子(真壁由紀).jpg

本作は第159回直木賞受賞の島本理生の同名サスペンス小説を北川景子主演、堤幸彦監督のメガホンで映画化した。
女性作家が描いた、親子の普段は触れることのない部分に切り込んだサスペンス。見てはいけない扉を開いていくような感覚で原作はどんどんと読み進めていけた。映画も球菜と由紀の心情を上手く表現していて、原作ファンも楽しめるだろう。

父親と娘という関係は親子であり、異性という点で思春期は特に難しい環境になることも珍しくはないだろう。母親と父親が愛し合って産まれた存在が自分なんだという現実を認識した上で感じる父親の性の部分は、娘からしたらなにか受け入れがたいところがあるのかもしれない。
また、そんな性の体験が自分自身の身にも起こる日がくることがなにか後ろめたくなったり、言葉では表現できない様々な葛藤がおこるのが思春期。
この難しい感情表現の部分を、実力派の役者それぞれの演技によって見事に原作の空気感を再現している。とくに台詞で説明するような場面がなく、表情や細かな素振りで表現していた点が映像化して良かった点といえるだろう。

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由紀の夫として登場する我聞(窪塚洋介)が素敵な旦那様で、作品の中では休まる場所がない由紀の唯一の休息の地として彼がいるのだと思うと本当に素敵な夫婦だった。劇中で登場する写真もとても素敵なので本当に個展でも開いて欲しい限りだ。

(文/杉本結)

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『ファーストラヴ』
2月11日(木・祝)公開

監督:堤幸彦
脚本:浅野妙子
原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫刊)
出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、板尾創路、石田法嗣、清原翔、高岡早紀、木村佳乃、窪塚洋介
配給:KADOKAWA

2021/日本映画/119分
公式サイト:https://firstlove-movie.jp/
(c)2021『ファーストラヴ』製作委員会

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