大きい桃に乗って旅に出る。ロアルド・ダール原作のファンタジー『ジャイアント・ピーチ』
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小説家ロアルド・ダールといえば、映画『チャーリーとチョコレート工場』の原作である「チョコレート工場の秘密」を思い浮かべる人が多いかと思う。生誕130年を迎えるイギリス人作家である彼は、ユーモアをふんだんに織りなす小説をたくさん書いた人。
「ガラスのエレベーター宇宙にとびだす」「マチルダは小さな大天才」「魔法のゆび」そして、先日アン・ハサウェイ主演の映画が公開されたばかりの「魔女がいっぱい」......。子どもの頃、図書室で読んだダールの本たちに、どれだけ心踊らされたことか。
映像化されることの多いダール作品だが、「おばけ桃の冒険」を原作にして生まれたのが『ジャイアント・ピーチ』(1996)である。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』に続きティム・バートンがH・セリックとタッグを組み製作した人形アニメーション映画。実写映像とるアニメ映像を組み合わせており、序盤と終盤は実写、中盤がアニメ映像という、ちょっと不思議な構成になっている。
主人公は両親を亡くし、叔母たちにこき使われていた9才のジェームズ。彼は謎の老人からもらった不思議な袋のパワーで、巨大な桃=ジャイアント・ピーチを出現させる。ジェームズはその桃に乗り込み、仲間となった虫たちと旅に出る。向かうのはかつて父親から聞かされていた夢の地、ニューヨーク......。序盤から、映像の美しさに心動かされ、まるで夢を見ているような気分になる。子供が見ても楽しめる脚本になっているが、ピュアな気持ちを取り戻したい大人こそ必見の作品である。
(文/峰典子)