もやもやレビュー

ありふれた青春を美しい世界に昇華させる『レディバード』

レディ・バード [Blu-ray]
『レディ・バード [Blu-ray]』
シアーシャ・ローナン,ローリー・メトカーフ,トレイシー・レッツ,ルーカス・ヘッジズ,ティモシー・シャラメ,ビーニー・フェルドスタイン,スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン,ロイス・スミス,グレタ・ガーウィグ
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監督グレタ・カーヴィグの撮影風景を見るのが好きだ。さらりとしたオーバーシャツを腕まくりしている時も、ワンピース姿でヘッドフォンを首に引っ掛けている時も。ジャッケット姿でノートパソコンを叩いているのもいい。『21センチュリー・ウーマン』などでの、演者の彼女ももちろん好きなのだが、監督として現場に立っている時の、才気をかもす彼女の美しさは、わたしにとって憧れの存在と言っても過言ではない。役者二世でもなく、子役出身でもなく、大学時代から自主映画を作り、たたき上げで成長し現在がある。その人生が、結果として彼女の魅力を増すことに、自ずとつながっているのだろうか。

さて、一人の若者のありふれた青春を美しく描いたのが『レディバード』である。主人公クリスティンは知的で洗練された東海岸での暮らしに憧れている。地元の大学に進んで欲しい母親と口論となり、「ここは嫌い!」と叫ぶ。きっと、日本でも同じような喧嘩がたくさん起こっているのだろう。片田舎の実家で悶々としながら、東京デビューを狙っているという若者たちが。

印象深いのは、クリスティーンのニキビだ。通常の撮影ではメイクや照明などで隠すだろう。しかし、それを演じるシアーシャとグレタはこの青春のシンボルを隠さないことを決断した。これこそ、青春映画のリアリティ。さらに、車の運転シーンや、恋の始まりと終わり、友情、中二病のような心のアップダウン。赤い髪。青春のすべてが詰め込まれていて、誰もが身に覚えのある若気の至りを思い出さずにはいられないだろう。どのシーンを切り取っても美しく、二度と戻れない刹那である。

(文/峰典子)

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