苦く美しい恋と死を描く『世界一キライなあなたに』
- 『世界一キライなあなたに(字幕版)』
- エミリア・クラーク,サム・クラフリン,ジャネット・マクティア,チャールズ・ダンス,スティーヴン・ピーコック,ジョジョ・モイーズ,テア・シャーロック,アリソン・オーウェン,カレン・ローゼンフェルト
- >> Amazon.co.jp
いかんせんダサい邦題になってしまったが、原題は「Me Before You」。ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のエミリア・クラークと、「あと1センチの恋」のサム・クラフリンによる『世界一キライなあなたに』を紹介したい。
イギリスの田舎町。カフェで働いていたルーこと、ルイーザ・クラーク(エミリア)は、突然の失業でお先真っ暗。一家の大黒柱であった彼女は、求人案内所へ向かう。そして、交通事故で下半身付随の状態になってしまった青年実業家であるウィル(サム・クラフリン)の介護と言う仕事を見つける。
名家生まれのウィルの報酬は、内容以上に莫大。オイシイ仕事を頑張ろうと張り切るルーだが、この仕事は期限付きだった。人生に絶望したウィルは、自殺幇助する団体(幇助が法的に認められるスイスに実在する)の手助けで、人生を終わらせようとしているのだ。軽口をたたき合いながら、いつしか気持ちを通わせる二人。そして、なんとか考えを改めて欲しいと願うルー...。
「安楽死」という正解のないテーマは、非常に苦しい気持ちになる。この作品に対しても賛否両論が交わされたし、作り手は当然そうなることを想定していたであろう。そんな重さを救うのが、どこまでもユニークでキュートなルー。オーケストラの演奏中にタグがついたままのウィルの服に気付き、歯で引きちぎるルー。ウィルからの誕生日プレゼントに、文字通り飛び跳ねて喜ぶルー。個性的なファッションがそんな彼女に花を添える。原題の直訳は「あなたの前の私」。愛した人と向き合う力を模索していくルーを心から応援したくなる。
(文/峰典子)