ウルヴァリンvs バットマン！ ノーランが描くマジシャンの世界『プレステージ』

クリストファー・ノーランの代表作を挙げるとすれば、バットマンシリーズ、もしくは最新作のTENETなのでは、と思うのだが、未見の作品がひとつあることに、つい最近気付いた。『プレステージ』(2006年)は、因縁により競い合う二人のマジシャンを描いた一本で、ノーラン5作目である。

舞台は19世紀のロンドン。ある奇術師の元で修行中の身であった二人の男、アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)。ある時、マジックの助手でありアンジャーの妻であった女性が舞台の最中に誤って死んでしまう。その原因はボーデンが結んだロープ。二人の関係は決裂。互いの心身を傷つけあいながら、激しく競いあうようになっていく...。特撮シーンも少なく、ノーラン作品にしてはなかなか地味なのだが、これが見れば見る程、噛めば噛むほど味わい深い。ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールの演技合戦は間違いないし、たくさん張られた伏線と、絡まり合うタイムライン。二回、三回と見ていくと、いろいろと気付くことがある。

後半に登場するアンジャーの助手にスカーレット・ヨハンソン。マジックの装置をつくる科学者にデヴィット・ボウイ(！)も登場。二人の師匠には、ノーラン作品に頻繁に出演しているマイケル・ケインが。脇役まで隙のない作品、じっくりと楽しんで。

（文／峰典子）