もやもやレビュー

月にも劣らず輝くシェール!『月の輝く夜に』

月の輝く夜に [DVD]
『月の輝く夜に [DVD]』
シェール,ニコラス・ケイジ,ノーマン・ジュイソン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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シェールと聞いて、何が思い浮かぶだろう。男ともとらえられる声で歌う「ドゥ・ユー・ビリ〜ブ」だろうか。それとも「バーレスク」で見た彼女か。あるいは彼女の元夫とのデュオ「ソニー&シェール」を思い出す人もいるかもしれない。どのシェールを切り取っても、一貫して、かなりインパクトの強い女性であることは間違いない。特に横にもわもわっと広がる、長〜い黒髪のパーマヘアと、目のやりどころに困る摩訶不思議な格好は、脳裏に焼き付く。

いまやレジェンドとなった彼女だが、デビューから20年ほどは不安定な生活が続き、1970年代後半にはとうとう低迷期に突入している。そんなとき、思い切って踏み込んだのが女優業。これが、期待以上に大当たりしたのだ(1982年から1987年までに4本の作品に出演した彼女は、その全てで賞を受賞したほど)。

彼女の女優絶頂期に公開された作品といえば、『月の輝く夜に』(1987年)。ニューヨークに住むイタリア系家族の一人娘、ロレッタ(37歳)が、婚約者の弟と恋に落ちてしまうラブコメである。少々ありきたりに聞こえるが、気持ちいいほどに物を申すロレッタがなかなかのナイスキャラ。体力があり余った獣のような、23歳のニコラス・ケイジが弟役を演じている。

ちなみにこの映画で賞を受け取った夜、シェールは、幼少期から大の憧れだったオードリー・ヘップバーンに声をかけられたそう。「本当によかったわ。あなたに選ばれて欲しかったの」と言ってくれたオードリーの言葉を、とあるインタビューで明かしていた。シェールが心打たれたことは、言うまでもない。本作は、山あり谷ありのキャリアのなかでも、諦めずに挑戦し続けたシェールが、たくましく映る映画でもある。

(文/鈴木未来)

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