香りの天才にして猟殺人犯をB・ウィショーが演じる 『パフューム ある人殺しの物語』
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- ベン・ウィショー,レイチェル・ハード=ウッド,アラン・リックマン,ダスティン・ホフマン,トム・ティクヴァ
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悲しみを煮詰めたような眼をし、気品と憂いを帯びた男ベン・ウィショー。それまで新進気鋭と言われることの多かった彼の名を世に知らしめたのが『パフューム ある人殺しの物語』(2006)である。
舞台は18世紀のフランス。悪臭漂う魚市場で生まれ、孤児となり施設で育ったジャン・バティスト・グルヌイユ(ベン)。話すことが苦手な子どもで、その代わりに類い稀な嗅覚を持つ少年へ成長していく。
皮なめしの仕事をしながら、街に溢れるありとあらゆる匂いを感じとり、この世の全ての香りを自分のものにしたいという渇望を膨らませていくジャン。ある夜、良い匂いのする赤毛でアンズ売りの少女に出会う。少女の匂いにとりつかれ狂気を帯びた彼は、誤って少女を窒息死させてしまう。調香師バルティーニ(ダスティ・ホフマン)の弟子として働き、いつしか人気調香師となりながらも、香りへの、そして少女への想いを募らせていく。そして、欲望をひとつ、またひとつと満たしていく...。
猟奇殺人を扱ったサスペンス映画はたくさんあるが、これほど美しい映像は見たことがない。もわっと香りが立つような映像美は、ヨーロッパの監督、トム・ティクヴァによるもので、本作以降ベンは、ティクヴァ作品にほぼすべて友情出演している。
人間離れした嗅覚のため、まるで悪魔のような力を持ってしまう主人公を、繊細かつ大胆に演じるベン・ウィショーの存在感に魅了されるこの作品。一見の価値がある。
(文/峰典子)